03.
(04の14あたりのおはなし)
・
・
・
「言っとくけど、ふざけてなんか、ないよ」
キャンプファイアーの炎に横顔を照らされながら、うーたんは静かにそう言った。いつものへらへらとした笑顔とは違うひどく真剣な表情に思わずどきりとしてしまう。
「ふざけてなんかない、ほんとだよ。俺は、きみが呼ぶならいつだって、どこにだってすぐに駆けつける」
本当だから、とうーたんはきっぱりとした口調で繰り返す。
「普段があんなんだから、悪ふざけってとられてもしょうがないかもしれない。けど、俺、本気だから」
言葉だけを聞けば強気な台詞に思えるのに、実際はどこか弱々しげなものに聞こえてしまうのはなぜだろう、なんて。答えは考えるまでもなくそこにある。
うーたんの声が、微かに震えているから、だ。
ただじっと見つめ返すだけの俺にうーたんは手を伸ばして、がっちりと後頭部を掴むと俺の顔を引き寄せた。そのまま、少し俯いたうーたんの額が俺の額にこつりと静かに合わせられる。
至近距離からまっすぐに俺だけを捉えるうーたんの目は、にげないでくれと、そう懇願しているかのようだった。
「……なに、それ」
「っ、めーちゃ、」
「そんなん言われたらさ、俺かなり自分に都合の良いように受け止めちゃうんだけど?」
それでもいいの?
いっそ睨みつける気分で数センチもない距離にいるうーたんを見上げれば、うーたんは一も二も無く頷いた。長い間待てをさせられていた犬がようやくご主人から「よし」を出されたかのようなその反応の素早さに思わず笑ってしまいそうになる。
「言っとくけど俺、ふざけてなんかないよ? 本気だよ? それでもいいの?」
「――いいよ、」
めーちゃんならいいよ、なんて献身的な言葉で答えてみせたうーたんは、ウサギというよりかはやっぱり犬みたいだった。
(結論:うーたんがわんこになる)
- 3 -
[*前] | [次#]