目が覚めたら、ユクモでした。


なんて事はまるで無く。
視界に入るのは相変わらず息の詰まるような病室。日の光を浴びない朝というのはサフィルにとってなかなか貴重な経験である。
軽い欠伸をし起き上がると、ぱたぱたと足音が近付いてくる。少し慌てた様子のミツキが部屋に入ってきた。朝から騒々しいことこの上無い。

「おはよう。いきなり聞くけど君昨日のあの後ここ出歩いたりしてないよね?」
「おはようございます。ええ、ずっとここに居ましたけど…。」
それほど重要な事でも無いだろうと思い知らない振りをする。ばれたとしても、寝惚けてうろついた程度だと言ってしまえばそれまでである。
「あれ、どうしたの、それ。」
案の定ミツキは枕元の水を見付け、訊ねる。どきりとしたが、ソルという人に貰ったのだと告げると何となく納得した様子であった。

「何だか慌ただしいじゃない、何か有ったんですか?」
「ああ、うん、そうだな…先ずは君に謝らなきゃいけない。昨日はあんまりな態度をとってしまった。ごめん。」
「いえ、そんな事はいいよ、気にしてないし。」
事もなげに笑えば、ミツキは神妙な顔で喋りだした。
「…実は昨日、君を見付ける少し前に、近くで人が死んだんだ。無論、こんなご時世人が死ぬのは何も珍しい事じゃあない。問題は死因でさ、人為的に斬られたみたいなんだ。背中に一文字、綺麗に、ばっさり。鎌鼬みたいに。」

何を言いたいのか、大体の察しはつく。疑いをかけられて当たり前なのだ。
「それを知らせて妙に身構えられてもどうにもならないしそれは私の仕事ではないから、黙ってたんだけど。」
「なら何故今教えてくれるの?その様子だと解決してないみたいだけど。」
「君の刀もナイフも、傷との刃渡りが合わなかったらしい。人間の血液も付いてなかったって。それに君は昨日からずっとここにいた。」

「今朝、また被害者が出た。全く同じ手口で。」




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