「新羅ー?おーい!しん…」

放課後の夕陽差し込む校舎内。俺は新羅を探していたのだが、偶然通りかかった教室で幸か不幸かシズちゃんを見つけてしまった。

(もしかして新羅も一緒にいる?)

そう思ったものの、相手はあのシズちゃんだ。気づかれないようにそっと教室の中を覗く。しかしそこに新羅の姿はなく、居るのはシズちゃんだけだった。放課後は大体喧嘩に明け暮れているのに珍しい、と思ったが今日は不良の皆さんを用意していなかったんだった。

(でも…喧嘩してなくともシズちゃんは化物なんだから独りがお似合いだよね)

新羅を探すはずの俺は今シズちゃんを観察することに夢中である。ほら、こんな機会めったにないからね。俺に気づかないシズちゃんなんて。ん?

(………気づかない?)

シズちゃんはいつも俺の匂い(?)に敏感で、人間離れした嗅覚でもって探し当ててくる。なのになんでこんな近距離なのに気づかない。

(さっきから外ばっか見てるけど………!?)

――泣いてる。

俺はすぐさまその場から走り去った。新羅には後でメールでもしておけばいい。今はそれどころじゃない。

(泣いてた…シズちゃんが…あの化物が…泣いてた!!!)

先程の光景が頭から離れない。嘘だ、違う、あれは…シズちゃんは化物!そう、化物だから皆近づかない。だからシズちゃんはいつも独り。化物には他はいらないんだよ。

(他に、他に、俺の他に)

そうだ。俺の他にシズちゃんに近づく奴はいらない。だから俺はシズちゃんをより化物にするよう仕立て上げたんだ。でも泣くなんて…そんな人間がすることシズちゃんには似合わない。シズちゃんは化物なんだから。

(だからもっともっと追い詰めてあげるよ、俺だけの化物)

他の奴はいらない。俺だけが化物の唯一。


ごめん
(なんて言うはずがない)



5000記念"ごせん"シリーズ

2011.0423


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