※モブと静雄が出会ってました
「―――」
「大丈夫。君なら出来る」
――むしろ君にしか出来ないんだ。
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(お腹空いたなあ)
私の頭の中には先程折原との会話よりも今日の夕飯のことでいっぱいだった。
(エビフライがいいなあ)
「………おい」
(カボチャの煮付けでもいいなあ)
「………おい!」
(ん?)
「私ですか?」
「………そうだ」
噂をしてたら何とやらなのだろうか。何故か私は呼び止められていた、平和島静雄に。
「何か御用?」
「あー…お前さ、さっき臨也と一緒にいたろ?」
「うん」
「あのよ、」
(何かデジャヴ…?)
私はまたしても同じ雰囲気を感じた。そう、ついさっき折原との会話で感じたような…恋してるオーラを。そして平和島はその期待を見事に裏切らなかった。
「どうすんだ?」
「何を?」
「告白ってどうすんだ?」
「平和島は折原が好きなの?」
「そうじゃなかったら告白なんてしないだろーが」
「ですよねー」
「………」
まさか今日だけで2人から、しかも世間では犬猿の仲で通っている人達から、同じような相談をされるとは。
「ちなみに折原のどこが好きなの?」
「好きなところ…」
「そう」
「俺とケンカ出来るところ…わけ解んねえことばっか喋るくせして無邪気に笑うところ…」
「うん」
「あと、アイツが俺のことを好きだっていう匂いがすること」
これにはさすがの私もさすがに驚いた。先程から直球な人だとは思ったが、しかし問題はそこではなく平和島が最後に言った言葉だ。
(匂いって…ホントに犬みたいだな)
「で、どうなんだよ?」
「ああ、告白の方法ね」
「おう」
「素直に自分の気持ちをぶつければいいんじゃないかな」
「…そうか」
折原の想いはバレバレ、彼は自分で告白する気マンマン。これは何もしなくとも直ぐにでも結ばれるだろう。
「ねえ、」
「何だ?」
「私は折原に何も言わない。だから早く迎えに行ってあげてよ」
「…ああ」
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それから8年経った現在、平和島はまだ折原に想いを告げられていない。
平和島は素直すぎるあまり、相変わらずの沸点の低さで喧嘩を優先してしまい告白云々ではない。一方で私はというと律義にもあの日誓ったことを守り続け、どちらにも手助けは一切行わなかった。
(でもさすがに、ねえ)
今の今まで黙ってきたのだが、最近はあの二人も身辺に変化があったらしく何やら騒がしい。
(ここが勝負所なのかもしれない)
折原から解放された私は直ぐに平和島へと連絡を取った。平和島に折原を迎えに行くよう促すためだ。
(これで私も御役御免か…)
今までのことを思い出したら少し、寂しいような気持ちになってしまった。何だかんだ言いつつも、私は二人に頼りにされたことに意義を感じていたのだろう。
(折原、平和島…ありがとう)
――さよなら。
その日池袋で一人の少女が目を覚ました。
伝わらない(私の気持ち、伝わる二人のキモチ)
2010.1130
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