俺は今ストーカーにあっている。ただし相手は俺の後をついてくるだけ、それも決まって池袋から新宿へ帰るとき。
(今日もいるいる)
当初から特に危険な感じがしないので、しばらく泳がせて様子を見ることにした。
(男にストーカーされるなんて面白そうだったしね)
ちなみに何をしてくるわけでもなく、そのため相手の目的が読めないまま1週間。
(でもそろそろ飽きてきたかな)
「ねえ、そこにいるんだろ」
「君は何の目的があって俺についてきてたのかな?」
「情けないことに、素敵で無敵な情報屋さんの俺が君の意図が掴めないんだ」
「面白そうだったからそのままにしてきたけど、飽きちゃった」
「だから、これでお終、…!!!」
俺が振り返った先には全く予想外の人物がいた。
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俺はその日、たまたま会ったセルティにある相談をしていた。
「臨也がブクロに来るとムカムカするんだが、来ないとモヤモヤするんだよ。これってもしかして新種の病気かなんかか?」
『とりあえず、新羅に診てもらったらどうだ?』
「正直あんま気乗りしねえ」
『大丈夫だ。新羅にはちゃんと私から言っておくから』
「ん、分かった。ありがとな」
後日、仕事が終わった俺はその足で新羅の家に向かった。
「やあ!待ってたよ、静雄。セルティが君のことをあまりにも心配していて嫉妬するわけだが、愛しい彼女のお願いならば例え解剖出来なくとも君の診察だって私は厭わないよ」
「そーかよ」
「ところでお悩みの症状は?」
「ああ、実は…」
内容を話すと新羅は何だかニヤニヤと俺を見てきた。
「静雄は自分の言ってること解ってる?」
「あ゛あ゛?テメエ俺の話聞いてたのか?」
俺が真面目に話しているというのにコイツは何を言っているのだ。
「そういきり立たないでよ。静雄は臨也がいなくてモヤモヤするってことなんでしょ?」
「だからさっきから、」
「それってさ、臨也がいなくて寂しいってことじゃないの?」
とりあえず新羅にはデコピンをお見舞いして、俺はそのまま自分の家へ帰ることにした。
(………ん?この匂いは、)
――臨也。
久しぶりに嗅ぐ臨也のヤロウの匂いに、俺は迷うことなくヤツがいる方へと走る。
(…いた)
相変わらずいけ好かねえ面してやがると思ったが、その時咄嗟に新羅の言葉が思い出された。
――『それってさ、臨也がいなくて寂しいってことじゃないの?』
いつもだったらすぐにでも殴りにかかるのに、俺は何故だかヤツの後をただ追うだけだった。
(こいつ本当に気づいてないのか?)
とうとう気づかれずに新宿まで来ていた。俺はそれで満足したのか、それからは臨也を見かけてはただ後を追うようになっていた。
(今日も来てやがった)
あれから1週間。今日もヤツは池袋から新宿に帰る途中、その時だ。
「ねえ、そこにいるんだろ?」
(俺か…?)
「君は何の目的があって俺についてきてたのかな?」
(なんだ、気づいてたのかよ)
「情けないことに、素敵で無敵な情報屋さんの俺が君の意図が掴めないんだ」
(ざまあみろ)
「面白そうだったからそのままにしてきたけど、飽きちゃった」
(…飽きた?お前が、俺に?)
「だから、これでお終、」
「そんなことさせねえ」
振り返った臨也の顔は酷く驚いたような顔をしており、俺はそれに笑みを浮かべていたと思う。
「ど…して、シズちゃんが、ここにいるの…」
「ずっといただろ?」
「な、んで。どうして、シズちゃんが…」
いつも無駄にお喋りする臨也の口からは俺に対しての疑問しか呟いていない。
「決めた」
「え…?」
「お前を捕まえる」
そう言われた瞬間、俺はシズちゃんから逃げるために素早く身を翻す。事務所まではもうすぐだったし、多少なり時間稼ぎは出来ると思ったからだ。
「どこ行くんだ?臨也くんよお」
間髪入れず俺のすぐ後ろから聞こえてきた声に身動きが取れない。それは同時にシズちゃんに一発見舞われたんだと思った時にはすでに遅かった。
「うぅ…ん?」
これはシズちゃんの家なんだろう。体に特に外傷はないので気絶させられただけか。
「目は覚めたか?」
「!!!」
また俺のすぐ背後からシズちゃんの声がした。それに些か恐怖を感じてる俺の体は動かず震えることしかできない。
「これでお前はどこにも行かないよな」
「………」
シズちゃんが俺を後ろから抱き締めてくる。けれど抜け出したくとも力が入らない。
「これで俺の病気も治るよな」
「う、あ…あ」
シズちゃんが病気なんて初耳だ。それに先程からシズちゃんから向けられているのは殺気ではない…だから気づかなかったのか。
「臨也、俺の臨也」
「うああああああああああ」
(シズちゃんじゃないシズちゃんじゃないこんなのシズちゃんじゃない違うちがうチガウ)
――コレハダレ…?
後ろの正面は(シズ、ちゃん)
(あたり)
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2010.0811
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