いつも見ているだけだった。
(あいつ、サイケはいいよね…)
俺はヤツと対等でいたいがために無邪気を捨てた。
(でもサイケは無邪気なのにシズちゃんと面と向かってられる)
「………ずるい」
「何がだ?」
「………津軽」
シズちゃんとそっくりな顔した津軽。こいつもサイケと同じで無邪気に俺に関わろうとする。
「何がずるいんだ?」
「………」
「イザヤ?」
「……サイケが、」
「うん」
「サイケが、シズちゃんと仲良くしてて、ずるいと思った」
そのせいなのか、津軽にはシズちゃんに向かって到底言えないような言葉を素直に零してしまう。
「イザヤは妬いているのか?」
「…そうかもしれない」
「そうか!」
俺の返答を聞いて何故だか津軽は嬉しそうにしていた。その時笑った顔がシズちゃんみたいで俺は思わず一瞬固まってしまったのだけれど。
「なんでそんなに嬉しそうなの?」
「イザヤが静雄と仲良くしたいと思っているからだ」
「そんなことで?」
「俺たちが仲良くしているのにイザヤたちが仲良くしていないのは悲しいからな」
「とは言っても、君たちは俺たちとは違うじゃない」
例えそっくりな顔をしているからといっても中身が同じわけではない。現にサイケと津軽はとても仲睦まじいが、俺とシズちゃんは対峙するやいなや喧嘩するのが日常だ。
「本当にそうか?」
「は…?」
「サイケはお前ではないのか?」
「津軽なにいって、」
「お前が無邪気になっても静雄は受け入れているぞ」
「!!!」
もう言葉なんか出てこなかった。俺はただ目の前にいる津軽をただ見ることしか出来なかった。
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「ねえ、シズちゃん」
「…サイケか。津軽ならここにはいないぞ?」
「違うよー。今日はシズちゃんに用事なんだよ」
「…そうか」
「あのね、あのね」
「何だよ?」
「ギューってしてもいい?」
「………」
俺の突然の申し出にシズちゃんは何かを考えてるみたいだ。でもそれはほんの少しで間だけで、シズちゃんは俺が抱きつく前に自分の胸に俺を引き寄せて包んでくれた。
「これで満足か?」
「………うん」
「じゃあ、しばらくこうしててやっから」
「………うん」
これが俺の捨ててしまったものだったかと思うと、少し泣きたい気分になった。それに気付いたかはわからないけど、勘違いしているシズちゃんの胸に思いっきり顔を埋めた。
「ねえねえ津軽」
「ん…なんだ?」
「今頃イザヤくんは泣いてしまってるかな?」
「そうかもしれないな」
「でもさ、それって悲しいのとは違うよね?」
「そうだな、悲しいとは違う」
「だよね!えへへ、津軽大好き!」
「俺もサイケが大好きだ」
――捨てられてなんかいない。だって俺たちはお前たちの側にいつもいるのだから。
――イザヤくん知ってる?しずちゃんも不器用さんで素直になれないんだよ!
真実がこぼれてしまうから(満足したか?…臨也)
(…!)
ツガサイ+シズイザ企画『君が歌うと、』様に提出
2010.0807
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