探



「…で、これついでなんだけど…」

「…何?」

心なしか、彼の表情がこわばった気がして、嫌な予感がした。
…本人は意識してないだろうし、気付いてないだろうけど。

「…お前ってさ、俺のこと…っつかここに住んでたこととか覚えてるか?」

彼の言葉に、私はギグっとなった。
どうしてそれを聞くのか、何て、考えなくても安易に理解できた。
ここへ来た時から、私は彼から見ておかしすぎたのだろう。
まぁ、そうだろう。
私がここの大体の町並みを覚えていたとしても
今目の前にいる人間と、以前どういった関係かもわからなかった。
多分知り合い程度だろうけど。
でも私はずっと嘘をついていた。
だから今ここで、自白するべきだ。
自分のことについて。
…口が重い。今、挙動不審になっていそうで怖い。
…でも言わないと。

「…本当は。」

何も覚えていない。ここに住んでいたことも殆どわからない。
…お前の名前さえも。
…そう告げると、彼は少し驚いているようだった。

「…昔のことも?」

彼の問いに、私は頷くことしか出来なかった。
何もかも、わからない。
わからないことが多すぎて、怖い。
けれど、次に発した言葉は、私の想像を遥かに越えていて。
一瞬脳が芯から凍ったようだった。

prev next

 

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -