寒



彼は私に対して積極的だった。

家に上げてもらい、2階にある部屋を紹介されたと思えば
荷物を纏めているところにずかずかと入り込み、
人の事情についてねほりはほり聞いてくる。
いや、むしろこちらのことを探っているかのようで。
最初は適当に相槌こそうっていたものの、
飽きてきた頃にだんまりを決め込むと、相手も飽きたのか何も言わなくなった。

恐らく私以外の人間だったら只の他愛ない会話なのだろうが、
私は人と話をするのが苦手だ。


彼は、暫くして大人しく部屋に引っ込んだかと思えば
数分経った後に、隣から声が聞こえてきた。
思わず返事をしそうになったものの、
どうにも私に対する言葉ではないようだった。
もしかしたら電話か、壁か何かに話しかけているのかもしれない
そこで私は時計を見た。短針は午後7時を刺していた。
携帯も見た。着信はない。

「はぁ…」

普通ならこういう場合、疲れきっているはずなのに
さっきまで寝ていたせいか、やけに意識が覚醒していた。

…寝たい時に眠れない。
こんなことになるならば、適当なホテルにでも泊まるべきだったのか
いや、それも面白くない。
むしろアリアに申し訳なかった。

その時突然ノックが鳴る。
私はハッと我に返り再び時計を見る。30分もボーッとしていたらしい。
なんというか、自分にあきれる。

廊下に出てみると、先程の男の母親にしては少し若い、
優しそうな女性と向き合った。

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