[星影テンポラリー]の星屑りら様より、2013リボツナ誕生日のフリーノベルをいただきましたvv
シリーズ物ですがこれだけでも充分に楽しめますvv
ツナに夢中なリボと、それを煙たがるツナの楽しいやり取りをどうぞご堪能くださいvv
りら様のサイトへはリンクから行けますので、よろしればこちらのシリーズだけでなく、りら様の素敵リボツナもご堪能くださいませvv





『ロマンスは突然に』




 ボス業に誕生日なんて関係ない。さっきまで誕生日パーティが開かれていたが、早々に切り上げてきた。
 主役がいない誕生日パーティに何の意味があるのかと思うだろう。そもそも誕生日にかこつけてどんちゃん騒ぎをしたいだけなのだから、俺は最初に挨拶をしたらそこで役目は終了。頃合いを見て下がれば問題ない。

 だだっ広い執務室に響く、紙を捲る音。ググッと伸びをすると、視界の端に映るカラフルな山。部屋の隅にはプレゼントが山を作っていた。勿論獄寺くんが全て中を見て危険物が無いかどうか確認済みだ。
 きっとリボーンの部屋も似たり寄ったりなのだろう。

「ツナ、こんなところにいたのか!!!!」

 バァァァンと勢いよく扉が開いた。
 来たよ、トラブルの根源が。来るな来るなという祈りは儚いものなのか。運命の導きは変えられないと言うのか! 
 嗚呼、折角ひとり静かな誕生日を過ごしていたのに、と小さく呟く。そんな俺には気づかず相変わらず目の前の黒い奴はリボーンワールドを展開していた。

「ひとりで部屋に籠る……そうか俺と一緒に過ごしたくてこうして待ってたんだな」

 この照れ屋さんめ、と語尾に星を付けて嬉しそうに頬を紅潮させている。本当、あの頃のカッコよかったリボーンは何処に行ったんだ? どうしてこうも変態野郎になったんだ。助けて母さーん!
 仕事をしている時のリボーンは不覚にもカッコいいかな、なんて思ってしまうのに。変態のスイッチが入ったらまるで別人だ。今なら簡単にやれそう。……いや、俺に殺されるなら本望とか言いだすだろうから実行に移すのは止めておこう。頭痛は増すばかりだ。

「お前なんか待つわけないだろう? 誰かさんたちが毎日毎日散々暴れ回ってくれてるからその後始末をしてるんだよ。見て分かれ変態」

 大げさにため息を吐いてやった。いい加減空気読め。そろそろリボーンは履歴書の趣味・特技欄に「沢田綱吉の機嫌を急低下させること」って書いたほうがいいと思うんだ。
 前髪が鬱陶しくなって掻き上げたら、無駄に反応しやがった。紅潮を通り越して恋する乙女だ。なんだこれ。ああ、誰かこいつを大気圏、いや宇宙の最果てに捨ててきてくれ……。

「ツナ、何て恐ろしい子だ……! 俺と二人っきりになるためにわざわざ密室に誘い込んでそんな官能的な仕草を見せるなんて!!!! どこでそんなことを覚えてくるんだ……っ!!!!!!」

 執務机を乗り越えて、飛びついてきそうな勢いだったので取りあえず、立ち上がって後ろに下がった。最悪壁をぶち壊して逃げてやるつもりだ。

「さぁ、遠慮しないで良いんだぞ?」

 舌なめずりをしつつ近寄ってくるその目はギラギラと欲望に輝いていた。
冷や汗が垂れる。すでに鳥肌は総立ちだ。こんなことならパーティを抜けるんじゃなかった!! あそこなら獄寺くんや山本が助けてくれたのに!
 朝から超直感は煩いくらい警鐘を鳴らしていた。リボーン絡みだという事は直ぐに合点がいった。昨日、誕生日プレゼントを渡した時にやけに淡白な反応(当社比)だったから怪しいとは思っていたのだ。
 公衆の面前で変態宣言をされてはボンゴレの株が落ちる。ここで騒いでいるのはうちの構成員だけじゃないから、それだけは避けたかった。だから、早々に引き上げてひとり閉じこもっていたのだが。
 まったくの逆効果!!! こいつを避けることはどうやっても不可能なのか!? でもこのままリボーンのペースに飲まれたら間違いなく危ない。色々と終わる。どうにかしろ、何かいい案は無いのか!?

「ああ、忘れないうちに誕生日プレゼントを渡しておかないとな」

 鼻歌を歌いながら、ポケットから取り出した小さな箱。
 箱にあしらわれているオレンジのリボンを、長くて綺麗な指が丁寧に解いていく。
 そこから出てきたのは銀の指輪。……指輪!?
 呆気にとられている俺を見て好機と思ったのだろう。うっすらと笑って俺の左手をそっと取った。
 そして、手の甲にまるで姫に忠誠を誓う騎士がするようにそっと口付けて、薬指にシルバーの指輪をはめる。

「Buon Compleanno.」

 何だかいつものリボーンじゃないみたいだ。映画のワンシーンのような、そんな甘さがあった。

「ツナ、顔が赤いぞ?」
「煩い!」

 リボーンに背を向けて、両手で顔を仰ぐ。その度にキラキラと光を反射するリングが目に入って、余計に熱くなる。
 これだから外国人は!! 胡散臭いことでもスマートに見えるから参る。心臓が持たない。
 そう、今心拍数が以上に上がっているのは普段と違うリボーンを見たからだ。きっと。雰囲気に呑まれただけ。だから静まれ俺の心臓!

「プレゼントはそれだけじゃないぞ?」
「へ?」

 まだあるのか!? もう勘弁していただきたいというのが本音だ。

「ほら、これ」

 そう言って手渡して来たのは四つ折りにされた紙。開いてみると、そこには“婚姻届”の文字が記載されていた。夫の欄には既にリボーンの名前が書かれていて、拇印もきっちり押されている。

「婚約指輪を受け取ったんだから結婚しても良いってことだろ? 前に結婚する約束もしたしな」

 何時もの調子に戻ったリボーンは、それはそれは嬉しそうにそうのたまった。
 って、おい。何時そんな約束をした。

「お前が酒を呑んでるときに言ってたぞ? 『俺、リボーンと結婚する!! リボーンだいすき』って」
「そんなこと言ったの俺!?」

 因みにその時抱き着いてきたぞ? 顔が真っ赤で可愛かった。

「嫌ぁぁぁぁ!!!」

 絶対嘘だ、嘘だ! 誰か嘘だと言ってくれぇぇぇぇ!!!
 頭を抱えて唸る。絶対そんなこと言ってないっ!! してない!!!!
 そこで当たり前のようにはじき出される結論は一つだけ。

「リボーンの作り話だろ!?」
「さあ、どうだろうな」

 ふふんと笑いながらにじり寄ってくる。非常に楽しそう。
 そして目くるめく妄想ワールドが展開される。

「子どもは……いらないな。俺とツナの邪魔をする存在は必要ねぇ。家は白くて二階建て。庭にはブランコがあって薔薇が咲き誇っているんだ。キッチンからはお菓子の香りが漂って、」
「……リボーン?」
「ああ、作っているのは勿論ツナ。俺は後ろから抱き着いてるんだ。寝室は勿論二人一緒で、ベッドもひとつ。毎晩抱きしめあって眠るんだ」
「…………。」
「パジャマは色違いのお揃いだ。それから――……ツナ?」

 怒りで震えているのか、痛すぎる科白に震えているのか、身の危険を感じてふるえているのか分からない。

「いい加減にしろばかリボーーーーン!!!」

 指輪を投げつけて、婚姻届を燃やした。

「折角ちょっと感動してたのに、婚姻届のせいで全部台無しじゃないかぁぁぁ!!」

 リボーンは目をまん丸く開いて、鳩が豆鉄砲を食らったような面を晒している。
 恥ずかしくて、情けなくて、俺は部屋を飛び出した。だから知らなかった。リボーンが心底嬉しそうに俺が去っていくのを見ていたことを。

 





 余談だが、あの後しつこく指輪だけは受け取ってほしいと言われ、終いには寝ている最中に忍び込み填めて行くので、俺は諦めて指輪を受け取った。
 受け取ったけど、絶対指には填めてやらない。でも、仕舞いっぱなしも勿体無いよな、という事であのシルバーは俺の胸元で輝いている。多分、リボーンは気が付いている。
 まぁ、偶には甘やかしてもいいんじゃない? 偶にだけど、ね?


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