One day is...

「日向!」

「あ?」



「元気!!!!!?????」



「・・・お、おう。」





ガコーン
自主練を終えてさぁ帰ろう、と思っていたところで勢いよく扉が開かれた。
伊月から繰り出された言葉は『元気!?』
もちろん疲れていたが、元気じゃないわけもなく。俺はとりあえず『おう』と返事をしたらこれだ。

『ボーリングに行きたい。』

今から?

『今から。』

言いだしっぺの伊月はまだ練習着だったががさがさと着替えをはじめ、そうして今に至る。
「見た!?俺ストライク!次日向!」
よいしょ、と重たい腰をあげ、自身のボールを手にとる。狙うはもちろん、ストライク。
いいぞ日向ー!とたった一人のギャラリーで俺の恋人が応援してくる。

ガコーン

「あ・・・」
「スプリット、だね。」
たった一人のギャラリーからとんでくる恐ろしく静かな解説。
「わあーってるよ、そんなの!もっかい投げりゃいいんだろ、もっかい!」
「うん、そうだよ、頑張って日向!」
ギャラリーの元気復活。戻ってきたボールに指をはめる。
いざレーンの前に立つと、なんだか緊張してしまう。別に賭け事をしているわけでも、試合なわけでも、なんでもないただの遊び、なのに・・・

(遊び、か。)

俺は勢いよく指からボールを離した。ボールは弧を描くように進んでいく。
「あ。」
「あー・・・」

ガコーン

「日向、ガーター。」
「・・・わかってる。」
「じゃ、俺ダブル狙いで。」
伊月が自身のボールを手にいつの間にか俺の隣にくる。俺は後ろのいすへと戻った。
「日向、見ててよ。」
「はいはい。」
「ちゃんと見ててよ。」
「はいはいはい。」
「・・・」
伊月の空気が少し変わる。少しだけ、アイツの周りだけピリっとする。
勢いよく投げられたボールはスピードを失わず、真ん中めがけて走っていく。

ガコーン

派手な音が響いた。ストライク。ダブル。
「どう!?」
「おー、すげぇな。お前ボーリング得意だった?」
「うーん、特別できる、って訳じゃないと思う。」
「気になってたんだけどさ、なんで今日いきなりボーリングなわけ?」

んー、と伊月は自身のスコアが書かれている画面を見つめる。
俺がボールをとろうと立ち上がったときに、
「次日向がストライクとったら教えてあげる。」
そんな応援の仕方、ありかよ。もうストライクとるしかねーじゃん。
俺は自分の中の、自身の内側にあるスイッチを切り替えた。

しっかり息を吸って、吐く。当たり前の行動。
白いピンを見つめる。あとはボールを・・・


ガコーン


「クラッチ、入ってたでしょ。」
「あ?継続中だ、ダアホ。はやく投げろよ。」
「あれ?理由は聞かなくていいの?」
「それよりこの集中力続けてーんだよ、はやく投げてこい!」
「はいはい。」




あれから2ゲームほどこなし、合計3ゲームこなした。
ボーリング場は駅から少し離れたところにあり、二人でゆっくり駅までの道を歩く。
「で、なんでボーリングなんだよ。」
「あー別にボーリングじゃなくてもよかったんだけどさ。」
「うん。」
「最近、日向とこう、どこかに行ったり、ゆっくりしたり・・・その、なんて言うか・・・」
「デートしてなかった、ってことか?」
「うん、それ。それがしたかった。」
『デート』という単語を聞いた伊月は下を向いてしまう。
そっか、俺があんまりコイツに関わってやれなかったから、かな・・・
なんだか自分の無責任感、了見の狭さを知ってしまう。
部員一人の、恋人一人の気持ちにも気づいてやれないとは。なんということだろうか。
「なんか、悪かったな。あんまかまってやれなくて。」
「いいよ、日向とバスケするのだってすごく楽しいし。」
伊月の顔がこちらを向く。あ、赤い。顔が赤い。
夜だけれど、伊月の赤い顔はしっかり見えた。



「伊月。」
「な、っ・・・」


伊月の唇に軽く俺の唇を落としてやる。驚きに目を見開く伊月。あー確かにこういうことも久しぶりだな。
「ごめんな。」
「・・・いいよ。」




さぁ帰ろう。駅まであと少し。俺たちが二人っきりの時間もあと少し。
君といられて、あぁ俺はなんて幸せなんだろう。



(今度はボーリングじゃなくてテニスでもいかねぇ?)
(日向テニスできるわけ?)
(まぁそこそこ。)
(楽しみにしてる。)




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8000Hit企画、奏多ちゃんよりリクエストいただきました、『部活後にいちゃいちゃする日月』です。
あんまりいちゃいちゃ、じゃなかったかな・・・?
リクエスト、ありがとうございました!
奏多ちゃんのみお持ち帰り可です。


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