same train
向かいのホームには一人、二人、ベンチに人がすわっている。
たった今、電車は独特の線路を走る音をさせながら、走り去っていった。
「あー・・・」
勝木は冷たく冷えたベンチに腰かけ、ケータイをひらいた。
時刻はちょうど9:00。部活で遅くなってしまった。
いつもなら八芝と電車に乗るが、今日は一本はやい電車にのりたいがために駅まで走った。
しかし残酷にも電車はたった今、勝木の前をとおりすぎた。
ケータイをポケットへとしまい、単語帳をとりだす。
するとバイブ独特の電子音がポケットから響く。
(・・・さっきしまったのに・・・)
そう思いつつも、ケータイをひらく。
『電車、のれた?』
八芝からのメールだ。『のれなかった。』と返事をうつ。
すぐに返事がきた。『残念。俺は優雅に歩いてる。』だからなんだ。
冬のにおいのする駅のホームで凍える指で返事をうつ。
本文を作成中に、電話がなりひびいた。
「はい。」
『もしもし?勝木?のれなかったんだな、残念。』
「あぁ、のれなかった。じゃぁな。」
そうとだけ言って勝木はブツ、と電話をきった。
カンカン・・・と遠くの方で踏み切りの音が鳴り響く。
もうすぐ電車がくる。この寒いホームともお別れだ。
いつの間にか向かいのホームには10人ほど人がいた。それでもさびしいものだ。
勝木は自分の目の前にとまった電車の二両目にのろうとした。
そのときまたバイブ独特のあの音がポケットからした。
『俺は六両目にいる。』
あぁ、結局同じ電車にのっちまったな。