キャプテンが言うには、火神が言うには。浜はすぐそこ。
誠凛高校の生徒、また村の人間にとって親しい『オパーサの浜』。
途中、道が少し悪くなる。辺境にあるのでまだまだ整備されていないところだらけだ。

頼まれた分のジュースを買える分だけ買い、ふらふらしながらオパーサの浜へ向かう。
道中、火神には会わなかった。ということは浜にでもいるのだろう。
汗を流しながら黒子は走った。


火神は海に足をつけていた。

「よう。」
「か、かがみくん・・・」

息が、呼吸が、苦しい。このままではまた倒れてしまう。

「あの・・・帰りにジュース買うの・・・手伝ってください。」
「はぁ・・・わかったよ。どーせ倒れてキャプテンにでも走ってこいって言われたんだろ。」
「・・・はい。」

火神はじゃばじゃばと海から上がり、足を拭く。
黒子はぺたん、と砂浜にしゃがみこんだ。

「かわらねーな・・・」
「何がですか?」
「海。俺たちはこうして大きくなってるのに・・・この海はかわらねー。」
「・・・そうですね。」

「昔から同じように冷たくて。夏に俺たちの体を冷やしてくれて。ガキの頃はよく泳いだな。」
「懐かしいですね・・・僕も覚えています。」

火神と黒子は幼少からの仲である。人もそんなにいない小さな村で育った二人。
そして今はお互いがお互いをささえるバスケのプレーヤーである。

「あの時のこと・・・覚えてるか?」
「あの時っていつですか。」
「いつでもいーんだよ。俺たちが昔にここでおよいだり、遊んだという思い出。」
「覚えています。きっとこれから先も、ずっと・・・」

黒子はふと海へ目を向ける。
何かが自分を呼んだような気がした。火神が不信そうにこちらを見ている。
波の音がする。じりじりと照りつける太陽。海。波。のみこまれる・・・
目の前に津波が襲ってくるような、感覚。
誰かが、自分を呼ぶ感覚。
波が、自分を、世界を、


のみこんだ。


「・・・・ろこ・・・こ!」


遠くで火神に呼ばれたような気がしたが、もうわからない。



#2
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -