▽死んだようにおやすみ



*同棲吏佐

「ただいまー」
あれ、おかしい。返事がない。それどころか玄関の電気すらついていない。
不審に思いながら、リビングに向かうが普段なら晩御飯の匂いがするのに今日は1ミリもしない。
リビングも電気はついていなかった。それどころか俺以外の人の気配がしない。
キッチンは昼に佐治さんが食べたであろう食器が、洗濯機は朝のまま洗濯物だらけ、風呂はもちろん入っていない。
どこかにでかけたのだろうか?
リビングのテーブルには近所のスーパーのチラシが散らばっている。あ、このティッシュ玄関で見た。
あとチェックしていないのは…寝室だ。寝室の扉を開くがやはりここも暗闇。
暗闇の中、何かが動く。
「あ、りひと…」
佐治さんの声だ。もしかして家事を放置して昼寝してた?
「どうしたンスか、昼寝ッスか?」
ふるふると首をふる佐治さんは普段にもまして色が白い。
「午前中に買い物に行って、なんかもらったかも…」
苦しそうに答える彼は少し涙目。あぁだから家事もされてない誰もいないような家になっていたのか。
「何か食べますか?」
「今は寝たい…」
昼から何も食べていないであろうことは想像できたが、ここは佐治さんの意思を優先させることにした。
佐治さんがもぞもぞと布団を手繰り寄せる。シーツと素肌がすれる音に息を飲んだ。
「おやすみ、吏人。愛してる。」
「おやすみなさい。俺も愛してます。」
普段なら愛してるなんて絶対に言わないのにやはり病気をすると寂しいのだろうか。
眠りについた佐治さんは青白く、死人みたいだった。青白い額に軽く口づけて、俺はリビングで寝ることを決意した。


翌日、佐治さんが目を覚ますことはなかった。



(ほんとに死人になってしまうなんて…)




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久々の吏佐!こんな話ですいません…
吏人のために家事する佐治さんをください。

2012.11.8