▽フォーエバーリビング(刻神)


刻阪が風邪を引いた。

刻阪にどうしても届けて欲しい、と頼まれ俺は学校帰りに刻阪邸へ向かった。
刻阪の家は俺が学校に行くまでにある。要するに定期券内。途中下車。
刻阪の家は住所と刻阪自身の説明でしか知らない。今俺が頼りにしているのは地図アプリだ。
駅前は想像していたより静かだった。
なんというか、閑静な住宅街の入り口…いや高級住宅街の入り口といった感じだ。
地図アプリに指示されるがまま進む。辺りは豪邸だらけだ。
こんな豪邸だらけの中に刻阪邸があるのか…
地図アプリが目的地周辺であるということを示していた。ということはこの辺に『刻阪』という表札が…
あった。ばかでかい。なんだこれ。俺の家2個分ぐらいか?さすがに大げさか。

ぴんぽーん

「神峰…あがってくれ。」
想像していた通り、家の中もすごかった。なんだこれ。よくこんなに手入れが行き届くな。
案内されたソファの座り心地も俺がこれまでに体感したことないものだった。
「なんか神峰、楽しそうだね。」
「え、あ、いやこんな豪邸初めてで…あ!楽譜!」
本来の目的を忘れるところであった。刻阪に頼まれた新譜を渡す。
「風邪は?もう大丈夫なのかよ?」
「大丈夫だよ。熱もひいてるしね。ただ楽器のカンを取り戻すのが大変そうだなー」
刻阪は真剣に新譜を見つめる。今の刻阪はパジャマ姿だ。なんだか不思議な感じ。夫婦か何かでリラックスタイムを過しているような…いやいや何考えてんだ俺!
ふかふかのクッションに顔を埋める。あぁこのクッションも最高だ。
「神峰、そのソファー気にいってるね。」
「なんだよ、こんな高そうなのうちにはないからな…悪いかよ。」
「そんなにいいならここにもう住んじゃう?」
「え?」

それは俺に毎日味噌汁作ってくれ的なあれですか? 


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刻阪絶対金持ちだろ。

2013.6.4