▽体温、急上昇中。(神刻)


「サッカー部の応援?」
野球の応援ならまだしも、サッカーの応援とはなんだ?と俺ははてなマークを浮かべる。
「そ。サッカー部の応援。うちの高校のサッカー部強いんだよ?知らなかった?」
知らなかった。サッカー部が強いとか今初めて知った。
「で。神峰。応援する曲の指揮ふって欲しいんだ。」
「え!?」

本日、晴天。管楽器がきらきら輝く。
俺はきらきらしない、白い指揮棒を握っていた。
やばい、緊張してきた。こんな大観衆の中で、しかも応援だなんて、プレッシャーが…
「何深刻そうな顔してんの?」
ひょい、と刻阪が顔をだす。今日はご自慢のアルトサックスは身につけていない。なんでも応援とか外でやる類のものは木管楽器はないそうだ。
「あー…緊張するな、って。」
「プレッシャー感じてる?」
刻阪の心は心なしか楽しそうだった。俺が緊張して失敗するのでも楽しみにしているのだろうか…いや、こいつに限ってそんなことは…いやいや…
「もう、しっかりしてよ!神峰なら大丈夫。この部に引き込んだ僕が言うんだから!」
ぎゅ、と指揮棒を握っている手を掴まれる。
身体中の体温が上昇するこの感覚。今日も楽しめそうだ。
「ほら、選手でてきたよ。あれが有名な一年生キャプテンで、なんでも切り返しが…」
刻阪が隣で色々解説してくれているが、その声はもう耳に入らない。
信頼している人の体温がこんなにも心強いものなんて。
刻阪の手を強く握りかえし、俺は覚悟を決めた。




----
SC連載おめでとう!
私は幸せすぎてどうしよう…
2013.5.19