▽量より質(降春)


下駄箱をあけると、誰かに借りた少女漫画のような光景がそこにはあった。
なだれ落ちてくる贈り物の数々。近くか遠くかよくわからないが、ひそひそと自分の話をされているのが聞こえる。
落ちてしまった贈り物たちを丁寧に拾い集め、教室へと向かう。周りの男子からは妬みともなんともとれない言葉をかけられた。

教室につき一息つける、と思ったのが間違いだった。今度は直接渡してくるのだ。
「降谷君!これ受け取って!」「降谷君、私のも!」「降谷これ食べて!」
次から次へと差し出される贈り物の数々。もはや受け取るのに精一杯だ。
予礼が鳴り、ようやく降谷の周りは静かになる。静かになったことに安心し、降谷はそのまま眠りに落ちてしまった。

眠っていたのもつかの間。女子特有の甲高い声に起こされる。
「降谷君おはよう!降谷君よく眠ってるしこれ、コーヒー!」「降谷君甘いのばっかだとあきちゃうかな〜って!」「ねぇねぇ降谷君!」
もう何がなんだかわからない。これは?何が入ってて?えーっと、これは?
またも予礼が鳴りか彼女たちは退散していく。
休憩は女子の相手、授業中は睡眠ふ降谷の1日はすぎていった。

贈り物ラッシュが落ち着いたのも放課後のことである。
降谷は青道を代表するピッチャー。きっと今日贈り物をした女子もピッチャーとしての降谷が好きな子がたくさんいるのだろう。
だから何人たりとも放課後の彼を邪魔するものはいなかった。
「うわー降谷君、すごい量。」
けらけらと同じクラスの彼が笑う。そういえばこの人からは贈り物してもらっていない。
「一緒に消費してよ…」
「無理だよ、その子たちの気持ちでしょそれ。」
「…」
降谷は沈黙する。彼が言っていることは最もだ。しかし…
「それでさぁ、降谷君。」
ぴたり、と隣を歩いていた彼が歩みを止めた。


「負担増やして悪いんだけど、これ食べてくれない?」



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ひー!長らくの放置すみません!
なんやかんやしておりました…
もうすぐバレンタインということで…!降春!
久々に書けてとても楽しかったです!
おそまつ!

2013.2.11