▽彼はジェントルマン!(倉亮


「あぁ!終わらねぇ!まじで終わらねぇ!」
どこを見ても問題問題問題、問題しかない!
倉持はたまった冬の課題にげんなりする。
冬休みも今日で終わりだ。明日にはこの課題たちを提出しなければならない。
どの教科の課題も中途半端で、最後まで終わっている教科は一つもない。
「やべー!しかも明日テストもあるだろ!」
数学のプリントの隅に書かれた『休み明けテスト』の文字にさらにげんなりする。
課題をただ答えを写すだけでは終われない。赤点を取ることは許されない。
「冬休みって宿題ねーんじゃねーのかよ…なんだよ…この量…」
「それいったいいつの常識?」
背後からの聞き慣れた声に驚き、思わず声をあげてしまう。
「何、その声。」 
亮介は倉持のあげた奇声とも言い難い声に眉を寄せる。今の亮介は制服姿で片手には勉強道具が入っているであろう鞄を持っていた。
「りょ、亮さああああん!助けてくれるんですか!?」
「んなわけないだろ、ちゃんとやれよ。」
あぁ、やっぱりこの人はこの人だ。頼られるってわかってて、ここにきて、こういう反応なんだ。
しぶしぶ倉持は課題の山に戻る。亮介が背後から消える気配はない。
「あのさ、」
「なんすか…手伝う気になりましたか…」
「これ、あげるから。じゃぁ。」
ぱさ、と背後で何かが落ちる音と亮介がさる音が聞こえた。倉持は振り返り音の正体を確かめる。
落ちていたのはプリントであった。それも赤色で丁寧に採点されている。
(なんだこれ…いらないプリントか?)
しかしプリントというには幾分紙がしっかりしている。そして何より丁寧に採点されているのだ。
(あ、これ問題用紙…)
「ってこれええええ!?」
問題用紙を見ると、何故紙がしっかりしているのか、丁寧に採点されているのか合点がいった。
これは亮介が昨年受けた休み明けテストだったのだ。課題は手伝わない、けど参考にするなりなんなりしろ、ということだろう。
倉持は散らばったプリントたちをかき集め思わず抱きしめてしまった。



翌日のテストは赤点こそなかったものの、課題は遅れて提出するハメとなった。



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明日から学校です。
遅くなりましたがあけましておめでとうございます!
今年初更新でした。
2013.1.6