▽手作りホールケーキ2 ピンポーン 「いらっしゃい。」 「お邪魔しまーす。はい、これケーキね。」 春市からケーキを受け取り、亮介はキッチンへと戻る。 慣れた様子で、春市は春市で洗面所へ向かって行った。 「兄貴、うがい薬ないの?」 「俺あれ嫌いだからおいてないよ。」 家にあるのが当たり前だったうがい薬。冬になると、母親が勝手に洗面所においていた。こんなところで、亮介は自分とは違う家に住んでるんだなぁと痛感。 亮介は大学入学してしばらくしてから一人暮らしを始めた。家から大学までは2時間ちょっと。通学できなくもないが、あまりのしんどさに嫌気が差し、一人暮らしを始めた。 「わ、すごい。これ兄貴が作ったんだよね?」 春市か洗面所からリビングへ向かうと、そこにはごちそうの数々。 「うん、全部ではないけどね。」 そういう亮介は今もキッチンで何やら作業中だ。 ピンポーン 「あ、俺でるよ。」 「ありがとう助かる。」 なんだか少しだけ昔に、小さな頃に戻ったみたいだなぁ。 チャイムがなって、どっちがでるか宣言して、どちらかは部屋にいて。 「あ、降谷くん。」 「…おじゃまします。」 す、とケーキを突き出し、降谷は上がり込む。北海道出身の彼も今日のこの寒さには参っているようだった。 「洗面所、わかる?」 ふるふると降谷は首を振る。 「右奥ね。」 こくりと頷き洗面所へと向かった。 キッチンに顔をだし、降谷から受け取ったケーキを亮介に預ける。 暖房のきいたリビングはとても居心地がいい。はやく降谷もこの暖房のきいた空間ここないかなぁとそわそわしてしまう。 「あ、7時。」 なんとなくつけっぱなしにされていたテレビがバラエティ番組に切り替わり、同時に時間も知らせる。 キッチンにいたはずの亮介はいつの間にかリビングに、洗面所から戻ってきた降谷は春市の隣に腰掛けていた。 「倉持先輩遅いね…」 「あいつ何してんだか。」 怒っているようだが、どうやら少し倉持のことが心配なようである。この寒さの中どこかで野垂れ死んでいるんじゃないか。 そんなとき、来訪をつげるチャイムがなった。 ---- 続きます。そしてクリスマスに間に合いませんでした!懺悔! 2012.12.26 |