また朝が来た。

あの襲撃の日から幾度もこの朝を迎えていてわかったことは、あまり大きな変化をもたらしてはいけないこと。あまりにも一度目の一週間と変化させることは出来ない。しようとすれば俺が死ぬ、もしくは強制的に今日に戻されるようだ。

また、みんなにこの輪廻を伝えることも禁止。なによりおまえらが死んじまうなんて言っても相手にされないし例え信じてくれたとしてもその瞬間、今日に戻される。せっかくみんなが協力してくれようとしていたのに、全部がおじゃんになってしまった。


何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も繰り返して、繰り返して俺ができる限りのあらゆる手段をこうじてみても必ず誰かが死んでそれを追うようにまた誰かが死んで。






そしてまた
今日がはじまる。





雷蔵と三郎が死んで。兵助と勘右衛門が死んで。俺が死んで。俺が死んで。俺が死んで。兵助と雷蔵が死んで。三郎が死んで。俺が死んで。俺が死んで。俺が死んで。俺が死んで。兵助と三郎が死んで。俺が死んで。勘右衛門が死んで。勘右衛門と三郎が死んで。俺が死んで。俺が死んで。俺が死んで。

三郎が
俺が
兵助が
雷蔵が
三郎が
雷蔵が
勘右衛門が
兵助が
雷蔵が
俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が。




守ってやれないのなら。
誰かに殺されてしまうのなら。
この時代がいけないというのなら。




「はち、おまえ…」

絶望したような目は


「なあ、三郎」

いまの俺の目と


「俺が全部食ってやるから」

同じ色をしているのだろうか





「次は平和な世で」



また一緒にいてください。





戰?忍?ゲームのやりすぎなんじゃないのか?


母親が作ってくれた弁当を雑に鞄に突っ込みながら気を付けるのよーなんて耳蛸な言葉を背に玄関を飛び出す。

平成という戰やら血なまぐさいこととは無縁の綺麗な時代。スリルを自分から求めていくような、どこか凡庸とした世界で血を見るようなこともなかなか滅多にない時代で、俺はまた竹谷八左エ門の名を持ち生を受けた。前の自分を思い出したのは幼稚園にあがってすぐ。自分のやったことを受け止めきれずに毎日毎日吐いていた俺を心配してくれた両親にはほんとに感謝している。幼稚園が合わないのかとわざわざ私立の幼稚園へ編入させられた俺はそこで懐かしい顔に再び見えることが出来たのだから。


「また寝坊か、はち」
「違う、雷蔵と携帯で喋ってたら夢中になっちまっただけだ」
「あ、あさから雷蔵と!わたしにはメールの一つも返してくれないというのにっ」
「今日なんか雷蔵、モーニングコールしてくれたし」
「なぜなんだっわたしのなにが悪いと言うんだぁああああ」
「三郎うるさい」


幼稚園に入ってすぐ見つけたのは前の世と同じ顔をした雷蔵と三郎だった。また顔を借りているのかと思ったらどうやら今生では二人は双子らしい。三郎におめでとうと言ったらありがとうと返されたのはちび時代のいい思い出だ。今思えばなかなか濃い初対面だったな。ちなみに二人には昔の記憶がない。まあ覚えていたらこうやって一緒にはいられなかっただろうから、少し寂しいが仕方ないと諦めた。今一緒にいられれば、それでいいさ。



「あ、兵助だ」
「勘またなんか食ってんぞ」
「冬は新作が多いからって、この前たくさんくれたっけね」
「雷蔵なら肥えてもわたしは大好きだよ」
「ほんと黙ってて」




カン、カン、カン、

見通しの悪い通学路を横断する線路に遮断機が降りる。

やけにその音が耳についた。





ガタガタガタ、線路が揺れる音と異常な速さで遠くからやって来る電車に目が釘つけになる。なんなんだ、これ。隣に立っていたはずの雷蔵と三郎は線路を跨いで向こうにいる二人に呑気に手を振っていて電車の異変に気づいている様子はない。



「なあ、雷蔵。電車、いつもより速くないか?」
「そう?あれじゃないかな、遅延してて急いでるとか」
「それにしてもあんなに速度上げるか、普通」
「さあ、僕にも分からないけど」


轟音が近づく。それにかき消されそうになりそうになりながらピピピと鳴った携帯に気付いて急いでポケットから取り出す。色んなところにぶつけたり落としたりして所々禿げたり傷付いたりした濃紺の五人おそろいの携帯をカチリと開く。新着メール一件と表示されたそれを開けば、線路越しに立つ兵助からだった。




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no title:
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これからも

ずーっと****だよ


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ガタン、ガタン、ガタン
明らかに普通じゃない様子の電車が曲がる素振りも見せずにこちらに突っ込んでくる。何両もあるそれがぐちゃりと歪んで横滑りに近くの家屋や塀を薙ぎ倒しながら迫ってくる中、携帯から視線をあげればいつのまに線路を渡ってきたのか兵助と勘右衛門が雷蔵と三郎に並んで俺を見ていた。

伸びてくる腕、みんなに抱き締められて考えることを忘れてしまったみたいに真っ白な頭の中にすぐそこまで迫った電車の破壊音と息を合わせたかのように揃った兵助と勘右衛門と雷蔵と三郎の声が響いた。





「これからも

ずーっといっしょだよ」






MT4
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