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▽ お腹いっぱい君をください / クロやち






ズルズル、と体をベットに倒れこませてから朦朧としながらも携帯をタップする。
学校生活に1割、部活に9割とフル回転したので瞼が重い…がこのままでは寝れない。
こういう疲れ切った時は彼女の声で癒されたいと思うのが遠距離特有の感情だろう。
呼び出し音4回目。
これが5回なるまでに相手が出なければ忙しいだろうから切るという約束だけど、今日は待ちたい。


『もっ、もひもしっ!』


呼び出し音5回目でギリギリ出てくれた。
余程慌てたのかもしもし、を噛んでいるし後ろで何か倒れる音もする。
それに笑えば『すみません…』と何笑われたか分かったのか謝ってくる。
(…ホント、おもしれーし、あきねーなぁ…)と足りない部分が少しずつ満たされていく感覚がする。
何か、喋らないと。
そうは思うが、謝り倒してまたぶっ飛んだ妄想を語りだす彼女の声に満たされていく感覚と疲労で瞼どころか口も重たい。
『…黒尾さん?』
あぁほら電話の向こうの仁花もこっちが喋らないのに気付いて心配そうにしてる。
だから大丈夫って呼び掛けねぇといけないのに視界がぼやけてきた。


(…やばい、まぶた、おちる。)


そう思いながら夢の世界へ旅立ちかけたその時に『…それは今度で』と聞こえた。







「…しまった、寝落ちした」


気がつけば結局俺は、仁花と1つも会話した記憶のないまま朝を迎えていた。
いや、というより仁花の声の心地よさにうっとりして寝たとか…最低じゃねえか。
反射的に携帯を見るが通話が繋がっている訳もなく…あ?メール?
それが仁花からで慌てて読みはじめる。


『お疲れの様なので、ゆっくり休んで下さい!
 えと、それからですね私も黒尾さんに会いたいです。


 …だから、その時にどうぞ存分に召し上がって下さい!です!』


文を全部読んで仁花の可愛さにも悶えるが…いや、何口走ったんだ、俺。
覚えのないきっと恥ずかしいことを言ったことに打ちのめされて枕にもう一度突っ伏した。
…朝の光が降り注いでいる
(お腹いっぱい君をくださいと、望んでいるから)




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