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▽ 影山くんに谷地さんが厳かに胸に所有のキスをする





心臓。
それはとても大事な臓器で多分臓器売買でも高値で取引されるんだろうなあと思う。
よどみなく生きてるうちは動くことを要求され、要求通りに動き、血を巡らせている。
筋肉と、脂肪と、肋骨の奥の奥に隠されて普通だったら手出しが出来ない。
そんな少し非現実的なことを考えながら私は彼の胸の上にうつ伏せになって微睡んでいる。
「谷地さんの考えてることって難しいな」と影山くんはいつも言うけどそんなことない、結論はいっつも単純明快だ、そこへ行く為に私はいっつも回り道していってしまう、それだけのことで―――彼みたいに迷わず結論に行けるようになれたらいいのに。
今だって心臓がどうのこうの考えてるけど、結局は彼の心音は落ち着くし好きだなぁ、とそれだけのこと…いやだけってことはないですけどね!とっても重要ですけどね!

「…谷地さん?」

ああ、頭も撫でてくれる、少しおっかなびっくりだけど優しいその手つきも大好きです。
要はここに居てくれてありがとう、【私の影山くん】で居てくれてありがとうとそういうことを言いたいのだけど、優しいこの空間は口を開くのに酷く億劫で愛しすぎたので、代わりに彼の胸にそっと、厳粛に。キスをしてしまおうと、胸に唇を寄せるのでした。


その後に「あんまり可愛いことするな」とお叱りを受けたのだけど。
か、可愛いこと??してないと思うんだけどなあ…。






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