小説 | ナノ


▽ 谷地さんに影山くんが笑いながら腕に恋慕のキスをする






ナチュラル同棲/多分大学生くらい/イッキ、よくない。



(…頭、いてえ…)


カーテンから差し込む朝の光が眩しすぎて気持ち悪い。
ついでに言えばいつも感じないだるさと倦怠感(谷地さんにこないだ教わったから意味合ってるはずだ)に身体が起き上がることを拒否している。
どうしてこう、体育会系の飲み会っつーのは下にガンガン飲ませたがるんだ…俺、強くねぇって言ったのに…関係無いってどういうことだよボゲェ…。
心の中の悪態もいつもより力が無い。今日が休養日ということも合って、イッキも何回か回された気もする…最早記憶も抹消したいくらいの曖昧さだ。
(…あーでも、ちゃんと家には帰りついてる)
帰巣本能に感謝しつつ、すん、と鼻をならせば朝ごはんの香りがする…やばいちょっと収まりかけてたのに…気持ちわりぃ。



「あ、影山くん起きた!大丈夫?」


ぱたぱたという体重の軽さを象徴するような足音とともに谷地さんがやってくる。俺を心配していつものように眉尻を下げる姿にすこし安心する、ついでに気持ち悪いのも谷地さんの匂いで緩和される。(すげーな谷地さん)

「あーまあ、だいじょぶ、…っす」
「本当?昨日影山くんふらふらで真っ青やら真っ赤になったりでもう私どうしようかと思ったよ…起きれる?」
「…がんば、る」
「そうかあ…朝ごはんはおかゆにしたしゆっくりでもいいから食べてね?」
「おー…」

ベットの端に手をつく谷地さんは台所から来たのか腕捲りをしてエプロン姿だ。その姿に幸せと感謝をかみしめる。谷地さんは影山くんみたいにすごい魔法のトスとかできない凡人の手だからといっつもいうけど、俺を心配して助けてくれる手で谷地さんの手こそ魔法の手だと思う。
(谷地さん、すげーな、かわいいな、ああ、…ちゅーしてえなあ…)
そう思うけど身体が起き上がらない、じゃあ今の俺の身体が起きあがる最高点に、ちゅーしてやるとそんな発想に可笑しくなりながら体を持ち上げて辿り着いた谷地さんの腕にふに、と自分の唇を触れさせてやったのだった。





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