真昼に照る太陽が、彼の横顔を焼いている。
白くて、整った横顔である。
女子が集う理由も分かる。勤勉であり、運動もそつなくこなし、顔立ちは均整であり、少しのユーモアも持ち合わせている。女子に告白されているところを屋上で目撃したことが何度もあった。

彼の横顔は綺麗である。実は、彼のその横顔を見たことがあったのは一度だけでない。彼は屋上に来ると、おもむろに本を取り出し、読書を始める。その彼の横顔を眺めてみるのが癖になりつつあった。

彼の横顔を見る度、俺の心は、言い知れぬ痛みに襲われる。切なくなる。一面に広がる空の青が妙に眩しく見える。ただ、彼の横顔は恐ろしいほどに美しく、まるで、計算し尽くされた美術作品のように存在しているだけである。彼は俺と同じ男である。そして、同級生である。たまにくだらないやり取りをしたりもする。だが、そんなことなぞどうでも良くなってしまう程に、彼の横顔は美しいのである。

短く切られた黒髪が揺れ、彼の白い頬を掠める。その時、その髪に隠れるようにしてふわ、と顔が一瞬綻ぶ。俺はその刹那の瞬間に限りない美学を感じるのである。彼の優しさや、強さや、その他諸々の彼の内面が、一瞬にして外側に広がっていくかのような。
本当に笑っているのか、それとも俺の妄想がそうさせているのかは分からない。妄想が彼を必要以上に美しく見せてしまっているのかもしれない。口は悪い。力もある。そんな男が、美しいわけがあるか。しかし横を向けば、美しい横顔はそこに存在している。

彼に告白をした女子は、こんな彼の表情を見たことがあったのであろうか。彼の横顔に惚れたのであろうか。

そこで、「人は恋をすると横顔を見る」という言葉を思い出した。思い出して、さぁ、と顔中の血がひいた。恋?それはない。彼は男だからである。生物学上有り得ないことである。しかし横顔はやはり美しい。俺は彼を男だと知っていながら、生物学上有り得ないと思っていながら、彼の横顔の美しさに、魅了されていくだけである。

ふと、今までずっと本にあった視線が俺に向いた。「そんなにじっと見られると、何か照れンだけど」。白い彼の顔に少し朱が差した。それがまた美しかった。愛おしかった。

あぁ、もう手遅れなんだ、そう自覚せずにはいられなかった。









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