※大谷青ルート後
転生ネタ





見えなくなった筈の彼は、確かにそこに居た。

きらきらと輝く銀の髪、線の細い背中。あの頃と全く変わらぬ出で立ちで、今、彼は己の目の前を歩いている。変わったのは、あの頃に着ていた鎧や身につけていた刀が、制服と学生鞄になっていることであろうか。
己が今見ているのは、それ以外は全く変わっていない、唯一無二の友人の姿であった。


自分は死んだ。関ヶ原の戦いの最中に。彼の友であり、復讐相手でもある一人の男の従者に大きい槍で刺されて死んだ。非常にみっともない死に方をしてしまった。

自分は友の姿を目の前にして死んだ。目の前が真っ暗になった。何もかも映らない。友が恨んでいた男の姿も、自分を刺したその男の従者も、決戦の場も、ただ一人の友の姿も。視界が真っ暗になる直前、彼は己を見ながら血の涙を流していた。ぼたぼたと。まるで、彼が神のように崇めていた男が亡くなった時のように、彼はたくさんの血を流した。それが自分が生涯最後に見た、友の姿であった。

みっともない。彼に、一番させたくない表情をさせたまま逝くなど。彼に黙って暗躍した挙句、止めを刺される彼を見ていられず勝手に彼の身代わりになって死んだなど。彼にとって、何と苦しい遺し方をしてしまったことか。自分の勝手なエゴだけで、どれ程彼を不幸にしてしまったのだろうか。全ての人類の不幸を望んだ自分が、唯一不幸にしたくないと思った彼を、どんな人類より一番不幸にして、一人にして己は逝ったのだ。


だから、自分は心に誓った。いつかまた戻ったその時は、今度は彼と共に生きようと。彼に二度と血の雨を降らせぬようにと。彼を絶対に、不幸にさせまいと。


「何をしている刑部、早く行かないと遅刻だぞ」

己の手を引いてくれる、何時の時代も変わらないその声が聞こえる限り、己は彼と共に人生を歩む。あの頃には動かすことが不可能であった、二本の足を使って。

彼が歩く。その道を己も歩く。そんな大したことのないことが、こんな自分を献身し、信頼してくれた親愛なる友への罪滅ぼしであり、恩返しなのだ。

「あい、わかった」










没文上げなおし。

この二人はもう末永く一生一緒に暮らして下さい






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