何を見ていたか、と問われれば、秋の星空を眺めていた。秋とはいえ朝晩は冷えるので、膝掛けを肩に掛けて、暖かいコーヒーが入ったマグカップを持って夜の空の下に出た。もう出てから数十分経つ。が、目的は果たせずにいた。流星群が流れて来ないのである。

それにしても今日は星空がやけに綺麗だった。こんなに見えたことがかつてあったかと思う程、綺麗だった。見渡す限り、星、そして星。これらの星の名前を全て知っている人は果たしているのだろうか、と疑問が沸いた。星一つ一つの名前は知らなくても、この空にある全ての星座の名前を知っている人はたくさんいそうだけれど。逆に言うと、星座の名前は知っていても、それを構成する星の一つ一つの名前や存在はあまり知られていないのかもしれない。人間と同じだな、私はそう思った。

一つでは輝けない。名前すら知ってもらえない。私には両親に付けて貰った大事な名前がある。だけれど、それを知っている人はどれくらいいるんだろうか。ふとそんなことを考えた。別にそれが何というわけではないけれども、名前も知らずに消えていく星がある。そんな当たり前を何か切ないな、と思った。私が死んでも、何事もなく世界は廻っていく。それを考えたら、寂しくなった。マグカップに入っているぬるいコーヒーを啜った。砂糖の量が少なかったのか、少し苦かった。


結局、流星群は流れそうにない。風邪を引いても困るので、家に入ることにした。
家に入ってから、最後に見つけた端の小さな星を思い出した。あれも私が生きていない頃に消える。いや、もう消えているのかもしれない。二千年前くらいの光が地球に届くと聞いたことがある。星と私は似ていて、しかし全く違うものだな、と思った。







明日テストです


2012/10/24 02:13


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