ぼくの顔には生まれつき黒い蝶みたいな痣がある。二度と治らない傷跡みたいに。
みんなぼくを見ると、おかしな顔をするんだ。変なものを見たみたいな顔をするんだ。同じ人間なのに、それだけで"可哀想ね"って言う。悲しい目を向けるんだ。
ぼくは可哀想な子なの?
もっと、悲しいふりをしなきゃいけないのかな。
そんなぼくの隣りには、いつも大好きな女の子がいてくれる。公園の木の下でチョコレートを一緒に食べるんだ。
何度も好きって言おうとするけど、臆病なぼくは言えないでいる。
こんな可哀想なぼくを好きなはずないって。きっと、可哀想だから一緒にいてくれるんだ、なんて悲しくなるんだ。
その日も結局、言えないまま。何百回こんな気持ちを味わっただろう。
ぼくの"好き"って言葉は、チョコレートと一緒に飲み込んでしまって、甘酸っぱい気持ちだけが口の中に残ったまま。
けれど、
『きみのチョコレート色の頬、チョコレートの味がするのかな』
女の子は突然そんなことを言うと、ぼくの頬にキスをした。そうして、頬をストロベリーみたいに真っ赤にカラーリングしながら、わたがしみたいなフワフワした明るい笑顔を浮かべた。
ぼくの頬に飛ぶチョコレート色のバタフライ。
甘いにおいを漂わせて、あの子の可愛い鼻をくすぐった。
可哀想なんかじゃない。
ぼくは世界一のラッキィボォイだと思う。
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