黄昏に消えゆくもの

 小さい子供の頃、欲しくて心トキめかせたものがたくさんあった。
 可愛らしいお人形。
 友達が持っていた玩具。
 素敵な装丁の本。
 子供の私には手が届かなくても――お誕生日、クリスマス。そんな特別な日以外にねだる程、私は我が儘ではなかった。だから、玩具屋の前を通っては物欲しそうに眺めた。
 けれど、その代わりに獲たものはたくさんある。

 ――想像力。

 本が高くて買えないなら、自分で書けば良い(半ば本気)
 漫画を買って貰えないなら、自分で描けば良い(これも本気。当時、私の家は漫画禁止だった)
 お人形の洋服が無いなら、作れば良い。
 ミシンを欲しがった小学生時代。布切れを見つけては不器用な手つきながらも針で縫い合わせていた。

 やがて――、
 ある程度のものなら手に入るようになった今、
 私はお金と交換に欲しいものばかりを侍らせている。それで幸せになれると思ったから。

 けれど、どこで思い違いが生じたのか。

 私が交換して来たのは、子供の頃の想像力や純粋な気持ち、時間だったのかもしれない。そんな風に何処かで思ってしまう。

 獲ることで確かに失ってゆくもの。


 お金なんかじゃ獲ることが出来ないものを失ってしまったようで、時折ひどく悲しくなる。失ってしまったものは戻らない。捨てたカードの様に。
 だから、懐かしむか悲しむしかないのだ。


 人間は失うことで大人へ成長するものなんだ、なんて強く言い聞かせながら――





 そうして――
 失って……、

 一体、最後の私には何が遺るのだろう。
 それが、けして無駄なものでないことだけを今から祈ろう。


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