時雨茶臼



自分の上で人が乱れるというのは、なかなか面白いものである。


人を策略に見事に嵌めるのも一興だが、この場合は手の平の上ではなく、文字通り自分の上で、だ。


今俺は腹の上に男を載せている。
お互い裸と来れば、だいたいの事は予想出来るだろう。

普段は彼を組み敷いて、抱え上げた足を奴の頭に触れるほどに押し倒し、物欲しげにひくつく蕾をじっくり眺めたりするのだが、
今日は何となく、腹に載せてみたくなった。

ほぼ全く動かない俺の上で、水揚げされた魚のように跳ねる化け物を見るのは爽快だ。
この体位はどうやらこいつも初めてのようで、腰をあげるだけでも必死なのか、一度くわえ込んでから次の動きに移行するまでの時間が長い。
その分長く楽しめそうだと、上機嫌の俺は彼の頬に手を伸ばした。

常に黒衣に覆われている体は、実は砂糖を彷彿させるほど白い。
無論だからといって舐めても甘くはないのだが、好いた相手だからだろうか、いくら舐めても飽きがくることはない。

その体に不釣り合いな、いっそ調和している黒い長髪は、俺の体に付くか付かないかのところで揺れており、大変くすぐったい。
そのうちの何本かは汗ばんだ首筋に張り付いて、仄かな、されど強烈な色気を醸していた。

頬を撫でていた手でその髪を首から引きはがす。
擽ったかったのか、はたまたそれが快感を生み出したのか。
一度肩を震わせた彼は、かたくつむっていた目をゆっくりと開いた。
右の青と左の緑は、どちらも人間にしてはありえない瞳の色。
それは言い換えれば化け物の象徴。
昔は目が合うだけで吐き気すらした。
だが今は、きっと生理的に溢れ出るのだろう涙で濡れそぼった瞳が、これほどに愛おしくてたまらない。

一度瞬きをした彼はそのまま目を伏せ、長めの睫毛の下に美しい色を隠す。
腕に力を入れはじめたか、彼の手が俺の腹を圧迫し沈んでいた腰が持ち上がる。

ふと、遊び心が俺に手を振った。
彼に伸ばしていた指先で、そっと首筋をなどっていく。
顎下から鎖骨へ、浮き出た骨に張る筋肉から順々に。
そうすればびくり、と身体を震わせ腕から力を抜くリウ。
いや正しくは抜けた、というべきだろう。
そこそこ上まで持ち上がっていた腰は、支えを失い勢いよく沈んでしまう。

「ひ、ん――…ッ」

奥深くをえぐり過ぎたか、彼はその白く細い首をのけぞらせ身悶えた。


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