わるいひと





正直、あいつの事は今でもはっきりわからないでいる。

軟派な様で、意外と堅実で。
女たらしな様で、意外と真面目で。

エイトと姫の結婚式騒動後、姫とエイトについての話題はトロデーンとサザンビークだけで無く、至るところで持ち上がっていた。

魔王も消えたほぼ平和な世界では、誰かのゴシップは最大級の御馳走で。
「お兄さん、いい呑みっぷりしてるじゃない。御褒美にサービスしちゃうわ」

「御褒美なら大歓迎だよ。君でもくれるのかな? 」

「やだあ」

かくいう私の前にも御馳走は広がっている。

元々こんなキザ野郎と二人で宴会に来る予定では無かった。

例の騒動後、トロデーンは異様と取れるほどに毎日毎日飽きずに宴会を催していた。
まあどうせ、可愛い娘を遠くに嫁に出さずにすんで現在有頂天のトロデ王が発案したのだろうけれど。
国民もそれに対しノリノリで参加しているため、問題という問題も無い。

「何だゼシカ、全く進んでないじゃないか」
「煩いわね。今ちょっと食べたり呑んだりする気分じゃないのよ」

さっきまでバニーガールと楽しげに会話していたククールがこちらを見て怪訝そうに言った。全く、余計なお世話だ。

「ふーん..あ、そこのお姉さんちょっと」

ククールはそう言うと、トロデーンの城下町に住む娘を追い掛けて何処かへ行ってしまった。

「あー、もう」

私はぐぐっと背伸びをして手近に置いてあった手羽先を適当に引っ付かんで無心で食べた。


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