ぼくのなまえ




 ―――なんでかな。おかしいな。

 ふかくてくらい森のなか、ぼくはふるえながらぽってりぽってりと進んでいた。

 ぼくはいつも、なかまのスライムとじめじめじっとりしたどうくつで、ほかのモンスターやにんげんからにげかくれして暮らしていた。

 ぼくたちいちぞくはみんなよわっちくて泣きむしだったけど、そんな現実にまんぞくしている。
 ぼく以外は。

 こんな日陰にかくれてめそめそした生活、もううんざりだった。
 この世界には、ぼくとおなじスライム種族なのに銀いろであしがはやいやつとか、いろ違いがさんびきあつまってかさなったりとかするやつらがいるらしい。
 やつらはおなじスライム種族であるぼくらとはちがって、ほかのモンスターやにんげんからいちもくおかれていた。
 そのはなしをちらりと聞いたときから、ぼくはひどくかれらにあこがれた。なかでも、たくさんのスライムがわらわら集まって王さまになるやつ。あれがぼくのなかでナンバーワンでオンリーワンにかっこいい。ぼくは、そいつになりたかった。

 そのはなしを近所のスライムにはなしたら、そんなのむりだって笑われた。じぶんのゆめを否ていされて腹をたて、ぼくはいきおい任せになわばりであるどうくつからにげてきてしまったのだ。


  
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