ドア・イン・ザ・フェイス | ナノ
 光忠は自身にスキンを被せると、フローリングにぺたりと座り込む少女の頬を撫でた。指先を唇に移動させ、あーんと言いながら口を大きく開かせる。少女はカタカタと震えながら、視線を四方に彷徨わせている。
 光忠は少女の咥内に固く怒張した自身を侵入させた。最初はゆっくりと、それから徐々にスピードを上げ、奥へ奥へと擦り上げる。少女は目尻に涙を滲ませながら、青ざめた顔で耐えている。
 この行為は三度目であった。喉を突かれる感覚が、先日の嫌な記憶を手繰り寄せる。
 少女は過去に二度嘔吐させられていた。初めて光忠がイラマチオを要求してきた時、少女は何の身構えもしていなかった。愛する恋人の願いに応えたいと思っただけであった。だが光忠は拒否の声も上げられない状態にしておきながら、ぼろぼろと涙を流す少女を知らん振りして自らの快感を貪欲に求めた。激しく喉の奥を殴られた少女はえずき、そしてすぐに胃の中のものを戻してしまった。同じ位のタイミングで光忠は精を吐き出し、少女の口からべとべとに濡れたものを抜き去った。

「ゴムを付けていてよかったな。汚れちゃうところだった」

 満足そうに微笑む光忠は、少女にスキンを外させながら、彼女の口元をウェットティッシュで吹いてやった。少女は大きくショックを受けていた。大好きな人の前で酷い顔を晒し、挙句の果てに吐いたのだ。溢れ出る涙を止めることができずに、少女はしばらく泣き続けていた。光忠はその間床の掃除をしていた筈だ。少女が落ち着く頃には口の中以外不快な場所は残されていなかったのだから。光忠は少女を立ち上がらせて、口をゆすがせるために洗面所に連れ添った。
 そういうことが既に二度あったのだ。少女はこの行為が恐ろしくて嫌いだった。咥内を荒らす光忠が悪魔のように思えた。早く終わってほしい。でも終わりを迎える時、また自分は戻してしまうのだろう。そういう出口のない恐怖が少女の体を締め付けていた。


 突如光忠がピタリと動きを止めた。少女は不思議に思い、遠く下の方を見つめていた視線を上げた。光忠は膨れ上がったものを取り出し、そしてくるくるとスキンを外した。
「そのまま舐めてもらってもいい?」
 光忠はうっとりとした表情を浮かべている。少女は一瞬のうちに色々なことを考えた。
 膣に出されなければ妊娠はしない筈だ。でも彼を酷く汚してしまうかもしれない。ああ、でも生の方がいいのかなあ。雑誌にもそう書いてあった気がする。
 少女は最後の考えを優先させることに決め、小さく頷いた。
 光忠は再び「あーん」と言い、少女の口の中へ自身を挿れた。光忠はゆったりと腰を動かした。そしてその動きはいつもよりも荒っぽいものではなくなっていた。
 暫くの間ゆるゆると舌や頬の裏側を擦られていると、それはびくびくと痙攣し、少女の口の中に液体を放った。
 少女は仄かに苦い精を飲み込みながら、生だとやはり気持ちがいいのだと確信した。いつもよりも達するまでの時間が短かった。それに、食道まで犯されるのではないかという本能からの恐怖も感じなかったのだ。これならば、光忠は短時間かつ浅い場所での戯れで満足してくれる。少女は希望の光を見出だせたような気がしていた。
 いつの間にか光忠はしゃがみこんでいて、そして少女のショーツをつうっと撫でた。少女はびくりと体を跳ねさせた。敏感な突起に触れられたことへの反射と、自分が股を塗らしていたことにやっと気がついたからであった。

「君も気持ちよくなってたの?このまますぐに挿れられるかなあ?」

 ふふ、と笑う光忠が、何も着けずに挿れていいかと聞いている。少女は深く考えずに大きく頷いた。生は気持ちがいい。彼も自分も気持ちがよくて、不快な終わりも何もないのだ。
 少女は下半身に違和感を覚えた。自分の中に異物が押し入って来る感覚。とても気持ちがいい。皮膚と皮膚が触れ合うことはこんなにも気持ちがよかったのか。二人を阻むものは少量の粘液のみであった。
 ぐちゅぐちゅと音を立てて光忠が抜き差しをしている。少女はきゅうきゅうと彼を締め付けながら、幸せを噛み締めていた。光忠が段々と腰を打ち付けるのが速くなっても、少女は痛くも苦しくも恐ろしくもなかった。やがて光忠は精を吐き出し、少女の中から出て行った。

「君に似たかわいい赤ちゃんができるといいね」

 光忠は楽しそうに笑っていた。少女は頭の先から冷や水を浴びたように温度を失った。忘れてしまっていた。中で出されたら妊娠してしまうかもしれないのに。つい先ほどまでちゃんと覚えていたはずなのに。どうしようどうしよう、少女は混乱するあまり吐き気を覚えていた。
 少女は脚を伝う自分以外の体液を感じたくないとばかりにぎゅうっと目を瞑った。


 目を開けたら優しい光忠が「あれは夢だよ」と頭を撫でてくれますように。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -