Villainess of sprig 1


中学生ともなると、まぁそれなりに色々有る物で、例えば部活が有ったりと小立との関係が濃くなったり。そんな変化の中には勿論恋人が出来たりと言うのも含まれる訳で、そういった変化がキッチリと私にも起こっているのだと思う。人並み程度には。
「さっきから何ボーっとしてんだよ、鈴。」
いきなり自分と机を合わせて座っている男の子、まぁ関係的には一応彼氏に当たる佐久間次郎が不意にそんな問いを尋ねてくる。まぁ、今みたいに呆然としていれば声を掛けられるのも当然と言えば当然だとは思うけど。
「特になんでもない。ちょっと恋人が出来たって事実がまだいまいち飲み込めてなくて、それに付いて考えてた。」
「ま、そういうもんかも。俺だってまだ大して実感湧いてないし。彼女とかで来たら生活ってもっと大々的に変わるもんだと思ってたけど、思ったより変化は無かった。」
次郎がそう言う。成る程、確かに彼が言った通りかもしれない。恋に落ちてそれが叶ったりするとドラマや漫画みたいにもっとくっついて四六時中一緒に居る物だとばかり思っていた。けど実際、自分と次郎の関係はただのクラスメイトで、私の片思いだった頃と其処まで変化してないし、変化と言っても微々たる物で、例えばメールを交わす回数が増えたり、こうやって一緒に食事を食べたりするようになった事位だろう。
「あ、まぁそれなりに変わった事もあるかもな。例えば何も考えてない時に、真っ先にお前の顔が思い浮かんで来たり、とか。」
「もう、そんな事言っても何も変わらないよ。それに実際はそんな増えてないでしょ。」
だが、彼の言う事も正しいかもしれない。相手の事を考える時間は付き合う前より格段に増えている、片思いだった頃よりも確実に。前までは趣味や勉強等と同じくらいの時間しか考えていなかった彼の事を、今はそれよりも数倍多く考えている。それは確かにそうかも知れない。
「そうじゃないって、事実だよ。多分だけど五、六倍には増えてると思う。」
「本当はサッカーの事とかの方が多いんじゃないの、次郎の場合?」
「だから、そうじゃないって。本当に考えてる時間は何よりも多い。」
次郎がそう言って、ちょっとホッとする。今落ち着いた拍子に気付いたが、これが属に言うオノロケトークと言う奴なのだろう。傍目から見ればイライラするが、確かにこう言う事をするカップルが減らないのも良く分かる。やってる本人同士、そう悪い気持ちにはならないのだから。
 そんな風に思っていると机に少し大きな人影が落ちる。それを見て、私は少し落胆した。源田だ。サッカー部のゴールキーパーであり私としてはちょっと話したくない相手。これが次郎と源田がどっちも私のほれていると言うのならどうにかしようも有るが事実は大いに異なる。私と源田が次郎を取り合っているのである。一応言っておくが源田は男だ。だからコレも私の勝手な思い込みに他ならない。だが、何となく彼が次郎に恋心を抱いてるのは分かる。女の勘って言う奴だろうか。
「おお、お二人さん。お熱い事で。」
「そう思ってんなら邪魔すんなよ、お前も。」
二人が会話を始める。はっきり言ってこう言うときの彼は羨ましい。友人として次郎とナチュラルに接する事が出来るのだから。私は多分、次郎とは恋仲以外の関係が成立しないだろうと思う。もし別れでもしたらその後は絶対にぎこちなくなるだろう。中良さげにする二人を見ながら、私は静かにそう思った。



「春川、ちょっと良いか?話が有る。」
部活での仕事が大体終わった時、源田にそう声を掛けられた。一応、今はサッカー部のマネージャーをやらしてもらっている。最も、他に何人も優秀な人が居るから次郎と付き合い始めてから入った私は一番下の雑用なのだけれど。
 源田に呼ばれたのは部室の裏、帝国学園の中では珍しく、少し汚く人が余り近づかない場所だ。其処に呼ばれた事で何となく、話される事の内容は分かった。そして源田の口が開く、其処から出た言葉は予想した通りの物だった。
「佐久間と別れてくれないか?」
「何で?」
すぐさま、私は聞き返した。
「あいつに頼まれたんだ。告白されたときは成り行きでOKしちゃったけど今考えてみれば付き合う程じゃなかったって――」
源田の口から残酷な言葉が発せられる。だが、そのすべてが終わる前に私はそれが真実でない事を直感した。
「嘘だよね?」
そう聞くと、やはり源田の顔には焦りの色が見えた。しかし、すぐに持ち直すと「何でだ?」と聞き返して来た。私はそれに答えを返す。
「源田君が私に別れて欲しいって言うのは本当。けど次郎に言われたからじゃない。多分、私が好きって訳でもない。」
其処で言葉を切って源田の目を見つめる。そして慎重に次の言葉を言い放つ。
「源田君は次郎の事が好きなんだよね?」
そう私が言うと源田の顔に今までに無いくらい焦りの色が浮かぶ。一瞬彼はそれを覆い隠して何時もの通りに振る舞おうとしたが、すぐにそれは諦めた。賢明な彼の事だ、自分の顔に出た焦りがそう簡単に誤摩化せない物であると悟ったのだろう。
「どうして……分かったんだ?」
突然聞かれた。彼の問いに、私は自分の考えを答える。
「確証はなかった。多分だけど普段の接し方とかに微妙に違和感が有ったんだと思う。簡単に言えば女の勘って奴だと思う。」
私の答えに源田は「そうか。」と答えて又違う事を聞いて来た。
「変だと思うか?男が男を好きになるって。」
その彼の問いにも私は自分の思った通りの事を述べる。
「そんなに変だとは思わない。むしろ、好きになる相手の性別何て其処まで関係ないと私は思う。けど、だからって相手に別れてくれって頼むのは可笑しいと思うよ。」
私の答えに源田はまたもや無関心にそうか、と答えた。そして立ち上がって、何だか力なく歩き始めた。先に帰るのか、そう思って私も帰ろうとすると、突然衝撃に襲われた。
「何?」
余りにいきなりな出来事に、私は一瞬何が何だか分からなくなった。だが、原因は単純だった源田に襲われたのである。
「すまないな、あんまり乱暴な手は好きじゃないんだが……」
そう言って源田は私の服を乱暴に剥ぐ。そして携帯を取り出すと下着の私を何度も取った。魂胆は何となく分かった、それをネタに私を脅す気だと。しかし、そう簡単に屈する訳にも行かない。私は何とかスカートのポッケに手を入れると、携帯を取り出した。そしてそれを開いて手探りにカメラを起動する。全くレンズの向いている方向は分からなかったがひたすらがむしゃらにシャッターを切った。数秒して源田が私から離れる。そして予想した通りの言葉を言った。
「あんまりこう言う事はしたくないが、仕方ないだろう。お前のちょっとした写真を何枚か撮った。もしコレを撒かれたくなかったら――」
「私も撮ったから。」
そう言ってかれに携帯を見せる。其処にはかろうじてだが源田が私を襲っていると見える写真が何枚か写っていた。
「さすがにこれを送ればいくら親友だからって言っても次郎も許さないと思うよ?」
源田は少し顔をしかめていた。多分此処までされるとは考えていなかったのだろう。むしろこうする事で私が諦めるとでも思ったのかもしれない。
「さすがにそんな事は私もしたくない。だから一個だけ提案するわ。私が貴女のケータイの写真を消すからあなたも私のケータイの写真を消して。」
私がそう言うと源田は仕方ないと諦めたような表情になり、私に携帯を差し出した。私もそれに触れると同時に彼に携帯を差し出した。
 そして二人でお互いのディスプレイから先ほどの一件の写真を全て消した。そしてお互いに携帯を交換し直してその場で二人とも帰宅の準備を始めた。そんな時、彼の口が少し動いた。聞き取れないくらい小さい声だったが何を言ったのかは大体分かった。
「やっぱり間違ってたかな、こんな事は。」
だが、それも一瞬の事で、彼は早々に準備を終えると帰宅の路に着いた。多分、彼としても相当気まずかったのだろう。
 気がつけば、当たりはすっかり暗くになっていた。気になって時計を見やると針は六時を示していた。早く帰らないと母に怒られるな。そう思って私は急ぎ足で駆け出した。
誰が相手だろうと絶対に次郎は渡さない。特にアイツには絶対に。冬の寒空の下、私は駆けながら一人心にそう誓った。

モドル




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