炎部は捨て駒と同じ。

一介の忍はもとより、暗部でも帰還不可と言われる高度な任務を受け持ち火影の命でのみ動く。

里の存続に関わる依頼処理担当、任務過誤は即己の死に繋がり機密と共に死を迎える。

所属人数不明。
入隊資格・入隊方法共に不明。

炎部の証は呪印、任務遂行中に腕の暗部の刺青を中心に上腕をぐるりと取り囲むように現れる。

暗部の仮面を隠れ蓑に闇に沈み、里の影で存在し続ける炎に縛られた忍。

これは葵がカカシに暗部としての姿を見せる前、猿飛と葵の中で交わされた誰も知らない契約の儀。










深緋の宝石が割れるなら










「すまぬ葵‥、すまぬ‥‥」

謝り続ける猿飛が葵には異様に小さく見えた、どこの誰ともわからない、世界が混乱に落ちている時に幼い自分を救ってくれた一人の老人。

その姿は葵にとって初めてで、責めようなんて事は思いもしなかった。

暗部への入隊、そして炎部へと繋がった今でもそれは変わらない。

「護衛の暗部の中に、‥いたんだな」

葵が火影邸に引き取られてから数年、生来の気質なのかとにかくじっとしていられない葵は護衛の暗部たちを相手取り、遊びと称して修行を始めた。

「知らなかったんだ、術を使うのに印を組むのが必要だなんて。カカシと書庫に通い始めて初めて知った、忍の事、術の事、里や、国の事‥これは俺の責任で三代目が謝る事じゃない。」

体内に術が眠る、分析部の胡蝶が言うにはカカシに拾われた時に流れていたチャクラが体内に留まると同時に現れた葵の変化だった。

自由奔放で悪戯好き、真新しい事に興味が尽きず子供には到底扱い切れない高度な術を使いこなす。

印を組まずに術を発動出来るなどと報告を受けた時、三代目はより厳しく暗部たちに箝口令を敷いた。

その中に上層から入り込んだ暗部がいる事にも気付かずに、葵の能力はその体の秘密を除き全てがその上へと渡った。

「胡蝶と益風から聞いたよ、三代目は俺の能力解明の分析を跳ね付けたって。」

「その結果が‥これじゃ‥」

「閉じ込められて切り刻まれる、力を引き出されてその内自我も消される‥そうなるよりいいじゃん、な。」

「葵」

「感謝してる、ほんとだよ。」

謎の多い力を使う葵、その能力を晒さぬならば木ノ葉に縛り付けよと上層の声が三代目に降りたのはつい先日の事だった。

長く空席だった炎部の座、それは死を受け入れるのと同じこと。

初めから死んでいるのに、受け入れるとかそんなの、関係ないのに。

「行こう、華証の儀だっけ?炎部の印を入れないとな。でもそれでやっと、俺も木ノ葉の忍になれる気がする。」

例えそれが呪印でも、木ノ葉に縛られるなら葵は本望だった。
これで絆が出来る、何もない自分に形として残る確かな絆がと、葵は三代目に向けていつもの様に笑顔を向けた。




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