「た、助けてシカマル!!」


バン!と開け放たれた奈良家の門はバイーン!と跳ね返ってバタンと閉じた。
一瞬の間に敷地内に入り込んだ茉莉は猛ダッシュで広い庭を横切ってシカマルの自室へと飛び込むがその姿はどこにもない。


「い、いないぃぃぃい!!裏切り者おぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」


畳に額を擦りつけるようにして突っ伏して、「ひどすぎる!」「コノヤロウ!」とのた打ち回る茉莉は急にガバッと起き上がると入ってきたと同じように奈良の屋敷を飛び出した。


「ゆっくりしてらんない‥‥!逃げないと‥ナルトに殺されちゃう、デース!!」


なぜか全身から水を滴らせる茉莉は一目散に入り去る、シカマルの自室に残されたのは謎の水溜まり。
それも犯人が茉莉だと分かれば「ああ、そう‥」と慣れてしまったこの奇想天外な行動を特に追求することなくシカマル以下奈良家の面々は納得するだろう。

今回に至っては「茉莉の方が正しい」と言葉を添えるだろうが。










だって心配なんだもん










バァン!!

「ぎゃあ!」


人目のある所なら安心かも!なんて考えた茉莉は迷うことなく街中へ。
しかしその目論見はあっさりと外れて目の前にあったポストらしきものが空高くぶっ飛んで行った。


「ひ、ひどい‥」


ポストがあったと思われる場所は大穴が空いていて道すら消えてしまっている、被害者が出なかったのが幸いと思えるような惨状に茉莉の顔面は青に染まる。

これはヤバイ、どうやら彼は周囲の人間などいようがいまいが関係ないようだった。
そんな事分かってたけどさ。

茉莉の隣に誰かがいたとしても標的にだけ攻撃を当てることは彼ほどの実力者であれば可能だろう、しかしこれは容赦してないと思った方が自分の為にもいい、と茉莉はカタカタと頭を上下に動かした。


「覚悟しろ茉莉!」

「ぎゃああああ!」


反射的に頭を抱えて体を小さくした茉莉の頭上すれすれになにやら風の塊が飛んで行った、「お、なんかふわっとしたわ」と命の危険がさらされる中でもそんな事を思っちゃった茉莉は轟音を立てて崩れ落ちた建物を視界に入れると無言でその場を立ち去った。

瓦礫の中を苦も無く走る姿は見る者が見れば蛇のようだ、すいすいにゅるにゅるとその姿は煙の中へ消えて行く。


「ち、また逃げやがった。逃げ足だけは立派なもんだな、初めっから。」


暗部総隊長であるナルトから逃げることが出来るなど相当な手練れにしか無理だろう、彼の補佐を務めているシカマルでさえ逃げ切ることなど出来はしない。
それは相手がまともであるなら、に限られるのだが。


「土遁に風遁を叩き付けても無理か、水遁は朝失敗したからな。」


早朝から茉莉を追いかけまわして今は昼、ヒーヒー言いながらもよくもあんなに走り回れるもんだとナルトは満足気に頷いて茉莉の走って行った方向へと視線を向けた。

シカマルは不在、となれば行く所など決まっている。
さすが茉莉と言えばいいのか、昼間近になってやっとナルトの思惑通り街中へと入って行った。

茉莉の通る道など把握済み、パニクッた場合に選択する行動すらも熟知しているナルトだが相手が茉莉なだけになかなか思い通りには進まない。


「ま、あとは待つだけだから気が楽か。」


追い込んだそこは罠を張り巡らせた巣窟だ、街中に張り巡らせたそれは茉莉にしか反応しないのだから里人には害はないだろう。
巻き込まれた場合は知らないが、と肩を竦めながら別に気にする風もなくナルトも同じく街の中へと入って行った。

気紛れに守っているだけの里人だ、それ以上に大切なものを見つけた今気にする必要などないのだから、と。





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