「はぁあん、獲れたての魚はやっぱり丸焼き炭焼きが一番デース。ドコサヘキサエン酸、ドコサヘキサエンサ〜ンらららん」
朝はしっかり食べなくちゃいけない、なにせ一日の動きっぷりは朝食に掛かっている!
いかに夜更かししようが茉莉が朝食を抜くことはめったにない、元の世界でもこちらの世界でも朝食が無ければ一日が始まらないのだ。
「カカシ先生に感謝ですねー、綱手様への任務完了報告前に魚獲れたてだからって寄ってくれるなんて、なんって優しい先生なんでしょ!!」
キラリと光る、秋刀魚。
変わらない朝に笑う
長いお魚秋刀魚さん。
今が旬だ、火の国では年中暖かいから旬があるのかどうか茉莉には分からないがおいしいって事は旬だってこと、と勝手に決めてみる。
カカシ先生のお弁当にも入れてあげなくちゃ、なんて考えながら秋刀魚を焼く茉莉は他の料理にも同時に取り掛かる。
秋刀魚好きのカカシが自分が食べたいから持ってきたなんてことは考えずに、真剣に取り組むその姿は茉莉の生活に置いて料理中と趣味である萌え要素探し以外では発揮されない。
「あ、でもその前にナルト起こさなくっちゃ」
シカマルが朝打ち合わせしたいことがあるからって昨日言ってたなと思いだした茉莉はコトンと包丁を置くとパタパタとキッチンを後にした。
すぐ戻ってくれば大丈夫、秋刀魚ちゃん待っててね〜、とにっこり笑って扉を閉めた。
パタン。
‥ガチャ。
「‥‥‥かわ」
(‥かわいい)
声に出してはいけない、すこぶる耳のいいナルトは寝てるかどうか怪しいくらいの勢いで、自身が納得できない言葉を瞬時に聞き取り反応する。
かわいい、なんて言っちゃって被害を受けたこと多数だ。
せめて三度目には対処しろと言いたいところだが、数十回目の今日やっと口を噤み脳内で考える事にした茉莉は自分の事を盛大に褒めた。
「ナルトー、朝ですよー秋刀魚ですよー任務ですよシカマルですよーん」
「うぅ〜‥‥」
(ぶふふん、かわうぃ〜!!)
ギャーーーーッと茉莉の頭の中は凄まじい勢いでファンファーレが鳴り響く。
見てるだけってなんて心地いいんだろう、しかもこんなに近いし触ろうと思えば触れる。
触りたくないけど、いや触りたいけど触ったら危険だけど。
好きだと自覚したって、なんやかんやした仲だと言ったって、元々培ってきた性格は変えられない。
(やっぱり近いところで見てるだけ、が幸せデス!!)
安全だし。
なんと言ってもここは忍の国、火の国内ではたいして危険なこともなかったけどナルト達の任務に同行(ではないけど)をしてよくわかった。
ここは危険だ!
実際は隠れ里が互いにスパイを放つことはよくあることで、異質な存在である茉莉が狙われることも多いのだが影で頑張ってた暗部たちがいる。
そんな事知らない茉莉は火の国はちょー安全だし!と思い込んでいるのだがそれこそナルトの思惑通りと言ってもいい。
こんな危険な所嫌デス帰りたいデース!わああああああああん!
な自体より全然マシだ。
出て行かなくとも始終警戒しまくってる茉莉なんて面白くない、時々あれだから面白いし興味を持つし傍に居て欲しいと思う。
時々いたずら仕掛けるのも油断してるからできる事でその反応もまた、興味深い。
「ナァァァルト、起き‥ッわわわ!っぎゃふぅ‥!!ナル‥起きてたのにずるいずるいずるい!シカマル来ちゃうよ離してよばかたれー!!」
ばたばたと暴れても、腕を掴まれ布団に引きずり込まれた挙句押さえつけられたら意味がない。
抵抗してしまうのはこの後何が起こるのか容易に想像できたからだ。
「シカマル来ちゃうよ!任務任務任務―ッ!」
「んぁあ?シカマ‥‥ああ、あいつならもう来た」
「うっそだねー!見てないもんおはようって聞いてないもん、それにご飯食べてってないし!」
「早朝だよそうちょー、茉莉が爆睡してる時」
「ううう、嘘だい!そんなわけないデスヨー気付くはずだもん!」
「‥‥‥」
なんだその自信は、どこから来るんだ。
茉莉は一度寝たらめったに起きない、連日続く理解不能の行動と口ぶりにかなりの体力を消耗するのかとにかく‥起きない。
ぎゅ。
押さえつけてる茉莉の両手が強く拳を握る「自信あるもんシカマル来てないもん」って事らしい。
「んじゃ後でシカマルに聞けよ、夕食には来るんじゃねえの。」
「えー、朝ご飯は!?」
「あいつは下忍の合同演習の助っ人、もう集まってる頃じゃないか」
「下忍‥じゃあナルトも行かなくちゃじゃん遅刻だよ!下っ端が遅刻だなんてそりゃもう犯罪デっすわぁうッ!いた‥痛い‥どして頭突き‥‥」
痛みを訴える額を擦りたい、でも無理だ、両手は相変わらず動かせない。
石頭め!と言ってやりたいけど痛みで鼻が熱くなるし涙は滲むしでとにかく痛い。
「下っ端はないだろ俺に向って」
「だだだだって下忍じゃん、早く任務ぅー、演習ぅぅぅ」
「影分身がもう行った、本体の俺はいっつもがんばってるからそのご褒美。暗部総隊長様直々に休めってさ」
「何言ってんのそれナルトじゃん、ぐひひまさかの一人芝居?ひっひっひっ」
「‥茉莉に言われるとむかつくわ」
「ご飯食べよ。‥‥‥‥ひゃッ!ちょわあ!!」
頬にふわっとナルトの金髪が触れた、首筋からぞわぞわと駆けあがるそれが耳に到達した瞬間に茉莉は弾けるように目を見開いた。
さっき以上に拳に力が籠って強く握る、でも全然動かない。
「‥茉莉」
「や!だだだ‥だめ!」
耳元でナルトの囁く声が脳を刺激する、やばい、そう思った時にはもう遅い。
「茉莉からも俺にご褒美、くれるだろ?」
やばいって、思った時にはほんとにもう‥‥遅いんだ‥
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