――すぐ戻る。
そう言ったナルトは瞬く間に茉莉の目の前から消えて、その姿を見たのは船に乗り込んだ時だった。
ちょこっとぶりのナルトはパッと見完全に簀巻き状態だった。
「‥‥サクラ、ナルトはなんでぐるぐる巻きなの?」
やっと準備が出来た船上ではミチル達が晩餐中、招待されたナルトたち七班だがナルトだけがころりとテーブル脇に転がされていた。
「ナルトったら護衛対象者に散々な態度取るからよ何度も言ったのに!」
「あー、成程。」
口に大きなテープを貼られたナルトは唸るだけで何も言えない、茉莉も助けようとはせずに「仲良くしないとダメだよ」と言葉を残して本日二度目の夕飯の為に食事の席についた。
「どしたのサクラ?」
「ううん、茉莉だったらナルトの紐を解くと思ったんだけど‥喧嘩でもしてるの?」
「喧嘩?まさかあしてないよ!でもちょびっと怒ってるデースね。」
「喧嘩でしょ」
「違う違う、喧嘩する相手がいなくなっちゃったから喧嘩できないもん。」
「何言ってんの、ナルトならそこにいるじゃない。」
「ちょっと違うデース。」
唸り続けるナルトを尻目に食事開始!と言っても茉莉の作ったものばかりだが、船上での食事は初めて。
雰囲気が違うと気分が変わってより楽しい。
毎回ぐったりと疲れた状態で家に来るシカマルもご招待してあげたいくらいのゆったり気分、と茉莉はニンジンのグラッセを口に放り込んだ。
「っんまいー!!さすが月の国!調味料とかものすっごく希少なのばっかりでお料理楽しすぎる素敵すぎる素晴らしすぎるー!!」
歓喜の声を上げる茉莉は転がっているナルトには目もくれない。
怒っている。
(だって目の前でどっか行っちゃってすぐ戻るって言った癖に、影分身置いてくなんてヒドイ!)
でも少し、かわいそう‥かもしれない。
怒る相手は本体のナルトであって影分身にではない、ここはちょこっとくらい助けてあげてもいいかもと茉莉は立ち上がり、ナルトの目の前に座り込んで手を伸ばした。
「ナルトー‥‥‥だいしょーぶデ、ス、カッ!っしょぉぉぉおおおい!!」
ビリィッッ!
「い‥‥‥ッてぇッッ!!!」
でも口に貼られたテープを思いっきり剥がすことくらい許してほしい。
この後嵐に突っ込んで行って理不尽な目に合わされたのだ、もっとやってやればよかったと茉莉が歯ぎしりするのはもう近い。
一面の海、目的地であるみかづき島の方向には暗雲が立ち込め、船を誘い込むように黒く大きな手を広げているようだった。
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