オチル…
落ちてる…
ドン!!
―――ちょっ…とイターイ。オデコイターイ。息、苦しー!!
どうやら体は柔らかい物の上に落ちて、頭は固い物の上に落ちたらしい。
けど、痛い。
薄く目を開けたら、キラリと青く光るお目々が見えた。小さい時集めたみたいな、綺麗な青いビー玉のようだ、ステキ。
―――はッ!!!
「ぷはっ!なにこの素敵状況―!!死亡フラグキタ――と思ったら将来有望株の外人少年と熱いキス!よくわからんが取り敢えず神に感謝!死に行く私にせめてもの贈り物ってか!?ナイス神様イケてる!折角だからも一度…ん―――」
馬鹿女現る
「…今回の任務は音と草の情報収集だけじゃったろう。なぜ殺した。」
ここは火の国木の葉隠れの里。
火と書かれた大きな笠を被った老人―――三代目火影は自身の執務室で目の前に立つ金髪の少年に問いかけた。
「邪魔だったから。」
悪びれもせず答える少年は伏せていた瞼を上げるとくつりと笑い、その様を見て三代目は眉を顰めた。
「お主が以前持ち帰った情報によると今は大蛇丸の動向に目を光らせる時。そんな時に音と草の忍が死ねば警戒され動きが掴みにくくなる。それくらいわからぬお主ではあるまい…ナルト」
「俺が殺ったってわかんねぇよ。だいたい大蛇丸なんざさっさと殺っちまえばいいんだ。元弟子だからって甘すぎんのも限度があるぜじじい。」
ナルトは三代目を睨み付け吐き捨てる様に言いきった。殺ろうと思えば殺れるのに、それを実行に移さないのは僅かながらに三代目への気持ちがナルトの中にあるわけだが、それにしても甘すぎだとナルトは三代目に背を向け歩き出した。
「待てナルトまだ話は終わっとら…」
バキバキ――
ドン!!!
「っな…ん………」
………重い。
ナルトが目を開けたら正に目の前に顔があった。
床に打ち付けたらしい後頭部と、何かが当たっている額と口が地味に痛みを訴えている。
顔の横に流れるふわりとした栗色の髪は長い……女だろうか?
女?
侵入者か!?と間違いなく侵入者であろうその女に対してナルトは反射的にクナイへと手を伸ばす。と同時に同じく目を閉じていた女の瞼がぴくりと動いた。
「ぷはっ!」
途端に目を大きく開き上半身を起こした女は訳のわからんことを叫び出した、勿論ナルトに跨ったままでだ。
死亡フラグって何だ?と幾千もの死闘を潜り抜けてきたナルトでさえも一瞬ぽかんとしてしまった。クナイに伸びたはずの手もそれ以上進みもしない。全く現状を理解していないのかそれとも理解しているのか、変わらずに叫ぶ女はナルトの瞳を覗き込むように顔を近づけるとにっこりと笑った。
「折角だからも一度…ん―――うわっ!イタイ!」
またも口を近づけてくる女の上半身を無言で手で払ったナルトは、手加減もなく自ら体の上から退かし落とすと女は受け身も取らずバタンと床に倒れこんだ。無様すぎるその姿に若干眉を寄せるぐらいにはひどい倒れ方だった。
ほぼ投げ飛ばしたような形になっていたのだが、それをやったナルトは勿論気にしてはいない。
女を押し倒すことはあれど押し倒されたなんてナルトにとっては初めてだった、油断も糞も無い、いきなり現れたとはいえ不覚には違いない。と、イラ付く気持ちを隠しもせず、倒れこんだ女を睨み付けながら立ち上がったナルトは原因となった女が頭をさすりながら体を起こそうとしているのを無言で見つめた。
「…そんな乱暴にしなくてもいいのに。恥ずかしかったんだよね。さぁ再びカモン!!」
「…」
「???ありゃ………………観客有り設定?え、そういうところ?」
カモ〜ン!と床に座り込んだままナルトに向かって両腕を広げる女は一点を見つめて首をかしげた。
疑問を持っているのはこちらの方だと、視線を寄越された三代目でさえ軽く目が泳いだ。
当たり前だ。火影執務室に単独で、しかも気配を悟らせもせず里外らしき者が突然現れるなんて例にない。
しかも変な事を口走る変で馬鹿で変な女。
「――何者だ。この里の者じゃないな。」
無言の三代目に変わり女に話しかけると、女はゆっくりとナルトに視線を移した。
三代目に視線を向けていた時とは違う、何か目の奥がキラッと光った、気がする。
「名前は高鳥茉莉でっす!中2の乙女!好きなものはりんごと本とイケメンとごはん!でもイケメンは遠くから見るのが精いっぱいのチキンですウフフ。りんごはまるっと齧っちゃうのが王道だよね!だけど飾り切りだって出来ちゃうよ!」
「「…………。」」
「あぁ里?里ときたかー!住んでるとこ昔は村だったらしいけど里じゃないな今じゃ立派な市ですわぁ。でもお嫁に貰ってくれるんだったらなんの問題もナッシング!1ミクロンたりとも後悔の念を残さず身ひとつで喜んで嫁ぎますデスよ!!ってか少年は外人じゃなかったのねアハ。ハーフ?日本語お上手デスネー!」
意味不明な事をダラダラ口走る「茉莉」と名乗る女を前に、人生初めてかと思えるような脱力感がナルトを襲った。
未だに床に座り込んだままの茉莉はアハハと笑い続けているし、言いようもない脱力感から浮上しようと思考を巡らすナルトはあることに気付いた。
音と草の忍たちは反吐が出そうな程弱かったが人数がそれなりに多く新しい術の実験に好都合で、放ちまくった術の効果は問題ないがチャクラを必要以上に使った…それが回復してる事に。
――状況から考えると、原因はこの女―「茉莉」か。
「じじい。こいつ俺が貰う」
「…は?いや、ナルト………」
「やったぁ!めくるめく愛の日々。死ぬ間際っていい事ありあり!早くも将来楽しみだけどすでに美・少・年・ゲットォ!出来たら5・6年先でも良かったかもしれないけど文句言ってらんない!さぁ!どうぞぉデスヨー!!」
「…おい。お前茉莉とか言ったか」
「はい!茉莉でございます旦那さま!!」
右手を高く挙げ返事をする茉莉はまず忍ではないだろう。というかこんなのが同種なんて嫌だと気持ちが先走る。
身元云々も重要だがチャクラの回復が本当にこの女の力だとしたら、利用価値は多いにある。
「誰が旦那だ。お前は俺の家に連れて行く。そのベラベラ話す口閉じておかないと――殺す」
「ガッテン承知イタシマシター」
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