わからない…
こんな気持ち持ったこと無かった、
人の気持ちなんて考えたこと無かったから。
俺にはなかった不思議な感覚。
奇怪千万七変化
あれからなぜか皆で芋を拾いつつバシバシと殺気を受けたシカマル含め皆帰宅。
サクラは「茉莉を泣かせたら殺すわよ!」とナルトを脅していったが最早そんなレベルではない。
どっちにしろ無理だし。
このままでは里全てが殺られる。
騒ぎの元である2人をなんとか家に押し込み、それからずっと続いている口論は時々大幅にズレながらも終局を迎えようとしていた。
「お前が変な事言うからおかしくなるんだろ!」
「変な事言わない!」
「……断定かよ‥お前が…」
奇矯な言動・行動ばかりの茉莉は完全に自覚がなかったようだと一瞬クラリと眩暈が襲った…
ナルトに眩暈…こんな事態を起こせるのは茉莉にしか出来ないだろう…
「だって…ナルト最近いつもと違うじゃん。ボーっとしてる事多いし話しかけてもすぐにどっか行っちゃう!大蛇丸から助けてもらってから…ずっと変じゃん!!お仕事お仕事で家を空けるのは仕方ないけど離さないって、許さないって言ったくせにこんちきしょードキドキしたりしちゃうのはいつも私ばっかり!逃げてばっかりな癖にちゃんとごはん食べてってくれるしでもご飯食べないのも嫌だけどやっぱりズルイデース!」
顔を真っ赤にして胸の前で拳を握り、捲し立てる茉莉は止まらない…
必死で話す茉莉は頓珍漢を通り越して妙竹林。
茉莉が言っていることを脳内で処理しようとしても早口で捲し立てるのだ…
いくらナルトでもポンポンと違う話題が凄まじい速度で展開されれば手こずる。
そしてそれでも茉莉の口…すでに攻撃に等しいが……止まることが無い。
「ナルトの馬鹿!阿呆!おチビ!野菜だって時々避けて食べてるの知ってるんだからね!シカマルのお皿に乗せたりするの知ってるんだからね!でも嫌いなにんじん粉々にしてハンバーグに入れてるから知らない内に食べてるんだから!だから私の勝ち!!ふん!!!」
…完全に話がズレてきた。
間違いなく意識してのことではないのがすごい。
しかも先ほど確認出来たところによると本人に自覚は無い、とにかく一生懸命生きてるから。
「っお前が…!」
両手を掴まれ、バンっと音が響くくらい強く壁に押し付けられた茉莉は…さすがに黙った。
脳内は
え?ナルトの勝ちなの?
だったがすぐに違う記憶で埋められた。
幸いである。
入れ替わったのはナルトの一言によって思い出されたあの時の記憶。
「お前を…クナイで刺した時に…最後に言った言葉が…」
「……「後悔しろよ」?」
「…それは俺の言葉だろ。」
「わ!…私?」
あの時確か気付いた気持ちを伝えなくちゃと必死だった筈だ。
後悔しろよって言われてヒドーイって思ってそれでいろんなこと思い出して……
でも声が出たかどうかすらわからなかった。
「ちゃ…ちゃんと聞こえてた?」
死ぬ間際だからこそ出来た茉莉の人生(←2回目の)最大の初めての告白である。
「…ああ。」
ボンッ!!
シュルン〜…………‥‥タタタタタタ……
「お…おい………」
ついに脳みそが爆発したのかと思う程真っ赤に染まった茉莉はナルトの腕から軟体動物の様にスルリと抜けると走り去ってしまった…。
相変わらず意味が分からない所で人並み外れた力を発揮する。
「以前はゴキブリだったが今回はタコか……」
初めて隠れ家に連れ帰った時のゴキブリ化。
押し倒したがカサカサと凄まじい勢いで体の下から這い出ていった。
今回はタコ化と命名。
縄抜けすら知らない茉莉がどうやってナルトの腕から抜け出したのか…
間接外せるのか?
と木ノ葉を背負う暗部総隊長の彼は考え込む……
はっきり言ってそこまで分析するほどの事では無いと思うが何事も突き詰めてしまうのがナルトである。
茉莉に関して行うなんて……
愚の骨頂
イコール馬鹿だ。
「逃がさねーぞ」
しかし立ち直りは誰よりも早い。
何よりも解決しなければならないのは最後に言われたあの一言。
折角茉莉から動いたのだ。
これを逃さない手はない。
家から飛び出していった茉莉を追いかけナルトも家を後にした。
それにしても、あんなに顔を赤らめるほどに恥ずかしいのか?
死の間際に言う程深く好きなのか?
俺じゃない他の男の名前…そいつのことがそんなにも‥
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