「はぁ……幸せ」
満面の笑みで呟く茉莉に視線が注がれる。

この状況で言えるお前はただ者じゃねぇ………










食べる事は幸せなこと










昨日散々茉莉に振りまわされたシカマルは今日も朝から頭を悩ましていた。

友人のナルト…もとい暗部総隊長であり上司のナルトは朝シカマルが訪れた瞬間からありえないほど不機嫌だった。


ナルトが部屋に入ってきた瞬間に山ほど飛んできたクナイはまだそのまま。


悲しいことにナルトの不機嫌な状態には慣れてしまっている…が、慣れているからと言って平気なわけではない。
あ、俺今日死ぬかもな…という結論に至るのが速くなっただけで変わりはない。

単に火影から茉莉の様子を見て来いと言われて来ただけなのになぜこんなことに……

さっさとこの家から退散して明るい日の光に照らされた里を歩きたかった…

なのになんだこの状況‥この重たらしい空気の中でなんで俺は朝飯を食わなくちゃならねぇんだ……
ちらっとテーブルに目をやると出来立ての料理が並んでいる。


雑穀ごはん
鮭ときのこのグリル焼き
鳥胸肉のサラダ
野菜スープ
デザートはフルーツのシロップ漬けとミルクハーブティ


かつて隠れ家でのナルトの家でこんなに料理が並んだことがあっただろうか…

なぜか冷蔵庫にはいつもびっしりと食材が入っていたが料理が出されたことなどない。
だいたい昨日俺が茉莉に出したのなんてカップラーメンと白飯だけだし…



これ……食べれるのか…?




朝クナイが飛び、次いで術を発動しようとするナルトの背から聞こえてきたのはまぬけな一言。


「おはよう〜」

…不思議な生き物、茉莉だ。


「よかったシカマルだったんだね。ごはん一緒に食べない?昨日のお礼に。ここのお米っておいしいよね。」


―――米?


「ナルト、今日は和食にしよ?ヨーグルトとかは危ない。」
殺気を放つナルトの横を通り過ぎる時に茉莉は普通に声をかけ


「シカマル、あの速く動く術ね……乳製品駄目だよ。」と俺の横を歩きながら真面目な顔してコソッと言われた


わけわかんねぇ……





昨日朝からナルトの瞬身の術で朝食とサヨウナラした茉莉は助言のつもりで言ったのだがそんなこと知らないシカマルは茉莉の不思議ランクをこっそり上げた。

いつの間にか印を組むのをやめていたナルトに三代目からの伝言をなんとか伝えている間に出来ていく茉莉の料理。

そしてこの状況に至る。



目の前にはまだ不機嫌そうなナルト。
いつも不機嫌だから何が普通かもうわからない…これ、普通か?


その横で一口食べては頬を緩ませ「幸せ」と呟く茉莉。

ナルトが普通に食べているところから安全な食べ物ってのは分かるが…なんとか箸を動かして鮭に乗っかっているきのこを摘まんで口に入れた。


ガタン!

「?シカマル??どしたの?おいし?」
急に立ち上がったシカマルに口をもぐもぐ動かしながら話しかける茉莉の横でナルトが密かに笑っている。



「……うまい…」



予想外に…てかそれ以上に…


ナルト…笑ってるし……………



「良かった、サラダも食べてね。ビタミン摂って。」
はい。と手渡されるサラダの器を受け取りまた席に着いた。


鳥胸肉に絡んだドレッシングと生野菜のシャキシャキがすごく合ってて
鮭は生臭さがなくてきのこに味が染み込んでてすごくうまくて…って違ぇ!!


ひとりツッコミを入れるシカマルを前にナルトはついに声を出して笑い出し
「ナルト変」
と言いながら茉莉は箸を休めず食べ続ける。

後から聞いた話だがナルトが初めて茉莉の作った朝食を食べた時も今のシカマルと同じ反応をしたらしい。
山盛りに盛られたフルーツにシナモンとはちみつが隠し味のフレンチトースト。


生きる為に必要なのは食べる事と語る茉莉は料理の才能がずば抜けていた。
ますます茉莉がわからない…


でもナルトが笑ったのを見たの久しぶりだったかな。


能力関係なしに茉莉は結構貴重な生き物かも、と茉莉への評価を少し改めいまだに静かに笑い続けるナルトをチロリと睨むと次の料理に箸を伸ばした。





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