しかしそうこう言いながらも、いつも男の恰好だし、たまには楽しそう!という緋乃のチャレンジ精神が発揮された。
「着てきまーす!」
此処へ来た時にやっていたようにスキップしながら着替えに行く。
衣装さんもそわそわとしながら緋乃の後に付いて来た。
簡易カーテンが準備されていてそこで着替えると、カーテンの前で待っている衣装さんを驚かそうと、シャーッ!とカーテンを勢い良く開く。
「じゃーん!どうですか?」
「・・・」
「あれ?反応無し・・・?」
驚く以前に何かおかしかったのかな、と緋乃は太腿までのスカートを少し摘まんで伸ばしてみる。
言われた通りシャツは第二ボタンまで開けたけど何かキツイ気もする。
もしかしたら少しサイズが小さいかも知れない、と緋乃は衣装さんに声を掛けようとしたが、ガシッ、といきなり手を掴まれて出かかった言葉が止まった。
「す・・・素敵です・・・!」
「え、ホント?良かった〜」
ほっとした表情で笑った緋乃は、ありがとう!と衣装さんの手を握った。
「君たち、もうすぐ撮影始める・・・って完璧じゃないか君!」
「ありがとうございます!」
よっしゃ、撮影頑張れそうだ!
内心はしゃぎまくりの緋乃の登場シーンは、主役の女刑事にコーヒーを持ってくるだけ。
しかしそれでもテレビ出演。
これは自慢できる、と余計に気合いが入る
と同時に、緊張して来た。
「やべー・・・心臓破裂しそうだ」
胸に手を置いて数回深呼吸するが治まる気配は全くない。
だけどやるしかない。
「よぉ〜い・・・アクション!」
カチン!と軽快な音が響き、緋乃は歩き出す。
そして無事に主役の女優の座るテーブルに辿り着くか着かないかの時。
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