唯一の主の命に従い里を守るために任務に駆ける、

それが忍。





でも、


‥私‥‥‥‥












月の歌姫   それでも、言わない。
 









「‥どうした?」


街を見下ろせる丘の上、チノの歌声が急に止んで問いかけた。
大きな木に背を預けて聞き惚れていれば段々と消えていったその歌声。
腕の中の歌姫を覗き込めば、長い睫毛が影を作って何か思いに沈んでいるようだった。


「チノ?」

『‥‥‥え?なあに?』


歌うのを終えてしまったことにチノ自身気付いてないようで、それでも不安そうな色は消えてなくて気になった。


「何かあったか?」

『なんでもないよ?』


チノが軽く笑いながら答える。
いつもの笑顔とは違うことに俺が気付かないと思ってんのか?


「ほんとに?」

『ほんと‥‥に。』


段々と視線を下げていきしまいには小さな唇を噤んだ。
声からも態度からも嘘であるのが明らかで、それなのに俺には言おうとしない。
でもきっと‥


チノは優しいから、俺に言わない。



『‥っ、‥ナルト?』

「飛ぶ」

『と‥?‥‥っきゃ!』



チノの体を抱きかかえて強く地を蹴った。

チノは空が好きだから、高く、高く。







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