sample | ナノ
義丸の兄貴に「お前は無愛想過ぎる」と言われた。
そんなのわかってますよ、と言葉通りに返したら「◯◯ちゃんに愛想尽かされてもしらねェぞ」と言うなり去ってしまった。
愛想尽かされる……心当たりがあり過ぎて妙に引っかかった。
◯◯は俺の恋人だ。
物腰柔らかく、気立の良さに俺は徐々に惹かれていき、生まれて初めて告白というものをした。
その時の俺はどうだっただろうか。今となっては記憶が朧げだ。
というのも、緊張していたからであり、下手な言葉の羅列だったにも関わらず、◯◯は俺の想いを受け入れてくれた。
話を聞くと、前から◯◯も俺の事が気になっていたらしく…
とても嬉しかった、と。
思い出して頬が緩む。
…はずなのだが、きっと今も俺の表情はあまり変わってないのだろう。
やはり、少しは改善すべきだろうか。
隣に並んで歩いていた◯◯が、俺を見上げる。
「舳丸さん、どうしたんですか?」
どうやら俺は上の空になっていたらしい。
…そんな事を考えていたなんて、言えるはずもなく。
愛想良く、真っ先に思いつくのは笑顔だろう。
俺はいつもより意識して口角を上げた。
「あぁ、少し考え事をしていた」
「!、…そ、そうですか」
少し驚いた表情をした◯◯。
これは……効果あり?か。
そういえば、せっかく◯◯と二人きりなのに、手が空いていた。
「!、み、舳丸さん…?」
そっと手を触れて握ると、◯◯の頬が赤くなる。
さも慣れたようにやってみせたが、内心は緊張してどきどきした。
自分でも分かるが耳が熱い…。
そこから先は、浜辺を歩きながら他愛もない話をした。
笑顔を心がけて、いたら、流石に◯◯も気になったのか聞いてきた。
「なんだか舳丸さん、今日はいつもと違いますね」
「あぁ。…安心……するか?」
「え?」
上手い言葉が思いつかず変な聞き方をしてしまった。
初めは胸の内に秘めとくつもりだったが、正直に話すことにした。
「俺は無愛想だろ?このままだと誤解されると思ってな。だからなるべく……笑顔でいようと思ってな」
「そうだったんですね。…無理してませんか?」
「え?」
今度は俺が聞き返してしまった。
無理をしてないか、と言われると。
…かなり無理をしている。
やはり、こうゆうのはバレてしまうのか。
「無理は、………している」
「じゃあ、いつも通りでいいじゃないですか」
「しかしそれだと…」
「ありがとうございます舳丸さん。でも私、いつもの舳丸さんが好きです」
不意打ちの言葉に目を丸くした後、ぶあっと頬が熱くなった。
いつもの俺、なんて、愛想もないのに…。
◯◯と目を合わす事が出来なくなって、視線を逸らす。
こうゆうところだぞ、と責めかけたが、そんな俺の不安なんて掻き消すように。
「ふふ、舳丸さん、照れてます?」
「…◯◯」
「はい?」
「俺も好きだ」
いつもの◯◯が。そこまでは言えず。
上手く言葉では伝えられないから…。
唇を重ねたら、◯◯の顔が赤く染まった。
22/09/22
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