sample | ナノ
「やっぱ明るい子だよな」
「は?何の話だ?」
皆がとうに寝静まった頃、俺と東南風は寝巻き姿でまだ起きていてテキトーな雑談をしていた。
水軍館の縁側で月夜を見ながら、次は何を話そうかと考えてフッと出てきた話題がこれだった。
「好きな女の子のタイプだよッ。なんか月見てたらそう思った」
「なんでだよ…」
「明るくて優しくて、俺のこと一途に想ってくれる女の子いないかなー」
「いねぇよ」
「ちょっとは希望のある事言ってくれよ……」
ばっさり切り捨てられ落胆する。
そりゃ俺は義丸の兄貴みたいにイケメンじゃないし、影も薄すぎるし、自分から行かない限りモテねぇし……。
でも、少しくらい夢見たっていいじゃないか。
あぁ、そんな風に女の子に想われたら、どんなに嬉しいことか…!
「『航さん、ずっと貴方のことが好きでした…』…なんて言われてぇ〜!あ〜!」
「よし、寝るか」
「突っ込めよ!!俺の裏声を無駄にするつもりか!?」
「お前が勝手にやったんだろうが…」
「まだ寝るなー!」
ぐわしと東南風の腰に絡むと元の位置に戻した。
ここまで言ったんだ。
なら最後まで聞くのは…。
「次は東南風の番!教えてくれよ〜」
「何をだよ」
「何って好きな女の子のタイプっ」
「……俺は」
素直に答えようとするので耳を傾ける。
そういえば、改めて東南風ってどんな子がタイプなんだろうか。
寡黙な性格からして、俺とはきっと違うだろう。
「俺は………
……静かな子が好きだな」
「!、へー、静かな子か…!」
「喧しいのは好きじゃない」
「なるほどなー…って、俺、遠回しに責められてる…?」
「お前は別だ」
別、と言われて少し安心する。
そうか。東南風は静かな女の子がタイプか。
東南風の性格を考えたら納得がいった。
確かに隣で喧しい女の子だったら、とんでもない顔になりそうだ…。
「静かな子がいいって言ってもさ、それだけじゃないだろ?」
「もっと詳しく言ったら、控えめで大人しい……って、何言ってるんだ俺は」
頬を赤く染めた東南風が手で顔を半分隠す。
東南風がノリ良くなるなんて珍しい。月夜のせいだろうか。
「彼女もいいけどさ、もう嫁さんが欲しいよなぁ」
「いきなり話が飛んだな」
「俺らの中で誰が一番先に結婚すると思う?」
「重じゃないか?」
「重か!俺は白南風丸かなぁって」
「あぁ、納得」
「つーか皆いい奴らだから、わかんねぇなぁ…」
寝転がって腕を伸ばすと、だんだん眠くなってきた。
東南風が俺の顔を覗きこむ。
「おい、こんなとこで寝るな」
「……ん〜…」
「…ったく、お前の嫁さんは苦労するな」
意識が遠のいていく中、東南風におぶられたような気がする。
こんなに頼りになる俺の相棒。
きっと嫁さんもしっかりした人になるだろう。
まだ見ぬ未来を夢見て…、
そんな事を思った。
22/06/13
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