sample | ナノ
「へい彼女!俺と一緒に団子屋行かない?」
「行きません。人を待ってるので…」
船に必要な買い出しに町へと出かけ、店前で間切さんを待っていたら厄介そうな男の人に絡まれてしまった。
あまり大きな反応をすると相手の思うツボなので軽くあしらう。
買い出しが終わったら、今日の夕飯は……と、予定を考えていたらまた男の人が私に話しかけてくる。
「嘘言っちゃって〜!こんなとこで待ち合わせする女の子なんていないでしょ〜」
しつこい。
こんなとこ、と言うのも……船専門の道具を扱っているので、女性には無縁な場所だと思ってるのか。
確かに私は女性だから、船には乗れないけど(女性が船に乗ると海の女神が嫉妬して災いをもたらすと言う)
私だって、兵庫水軍で育った海の女なんだから。
キッと睨みつけると、先程とはうってかわって男の人が一気に青ざめた。
ん?私そんなに凄い…?
「えっと、ぁ…、その…ッ!」
「…あぁん?何が嘘だって?俺が聞いてやるよ」
頭上からドスの効いた声が聞こえ、くるりと振り返る。
そこにはどんな人も腰を抜かしそうな、鋭い眼光で睨みつける間切さんがいた。
見た目が見た目だけに、間切さんは迫力が凄い…。
「す、すすすすすみませんでしたぁぁあああーー!!失礼しますっっ!!」
「ったく………あ、◯◯っ。大丈夫か?」
いつもの穏やかな間切さんに戻る。
あぁ、本当はこんなに優しい人なのに……彼の中身を知らない人は気の毒だ。
「ありがとうございます間切さん。助かりました」
「いや、俺がもっと早く出れば良かったな…ごめん」
「そんな……間切さんカッコよかったですよ」
「かっこ…!?」
真っ赤な顔になって口をぱくぱくとさせる間切さん。
ちょっと可愛い…なんて思ってしまいくすくす笑う。
私と幼い頃から一緒にいる間切さん。
私と間切さんは兄妹みたいな関係で、一緒にいると心地いいから、つい傍にいてしまう。
「…っ、お前なぁ、あんまそうゆう事…」
「?」
「な、なんでもねぇ!か、買い出しも終わったし…
……どっか寄るか?」
まさかの提案。
そのまますぐ帰ると思ってたから……嬉しい。
「間切さん、陸酔い大丈夫なんですか?」
「さっき海水スプレーかけたから大丈夫」
「じゃあ、お団子屋行きたいです!」
「さっきの男いるんじゃねぇのか……」
「間切さんがあれだけ凄んだから大丈夫ですよ」
間切さんの手を取り早く早くと団子屋へ向かう。
笑顔で振り返ると、何故か間切さんは視線を逸らし耳を赤くする。
不思議だ。さっきはあれだけ行くのが嫌だった団子屋も、間切さんとなら嬉しくて仕方ない。
それは間切さんが家族で、お兄さんみたいなものだから……。
そう思ったけれど、何かが引っかかった。
22/06/13
夢小説に戻る