sample | ナノ
「網問さーん。失礼します………あれ?」
今日も一日が終わり、寝る前に少し網問さんと話そうと思ったら…。
ぼんやりと灯火だけが光る部屋の中に入ると、本人の姿が見えなく首を傾げた。
もしかしてまだお風呂かな?、と思い……私は網問さんの部屋で待つ事にした。
敷かれていた布団の上に寝そべると、何となく辺りを見回す。
(…綺麗な部屋)
流石は網問さん。
普段の彼は、だるそうに船上の掃除をしているように見えるけれど…。
なんやかんや、整理整頓され隅まで掃除が行き届いている辺り、本当は真面目な性格だと伺える。
…恋人の彼が、ここまで掃除が出来る人間だと、彼女である私の出番がない。
なんだかなぁと思いながら、網問さんのおかげで寛げる空間に『ん〜』と腕を伸ばす。
(網問さんが帰ってくるまで暇だなぁ…、!)
思い出した。
網問さんに貸していた本の事を。
私のお気に入りの小説で、まだ読み終えているか分からないけど…。
時間潰しに読もうと思い、数冊の本が置かれている文机に指先を伸ばす。
「あったっ。やっぱりここに………、あ」
ぱさり、と、何かが私の膝元に落ちた。
それは本の隣にあった巻物で、きっと大切な物だろうと思い、
慌てて拾おうとした……が。
「…ッ!?!!」
落ちた弾みで、少し広がった絵巻の中身を見て、私は声にならない声を上げた。
…これって。これって…!
「しゅ、しゅしゅしゅしゅ……っ!?!」
…春画だ。
話には聞いていたけど、これが……。
は、初めて見た……お、落ち着いて!
どう考えても、これは網問さんの物だよね。
…網問さんの部屋にあったんだから。
あ、網問さんは、男の人だし。
やっぱりこうゆうのも見たりするよね…。
うん、仕方ない…!と、自分に言い聞かし、不本意とはいえ、彼のプライバシーを覗いてしまった事に罪悪感が芽生える。
早く巻いて、見なかった事にしよう。
…と、思ったけど。
「…………………」
見たら駄目、なのに。
網問さんが、……何が興味があるか気になって。
恐る恐る、少しずつ広げていくと、言葉では到底言い表す事が出来ない男女の様子の絵に、きゅっと唇を噛み締める。
(あ、網問さん。こうゆう事したいのかな……ッ?)
激しすぎる展開に顔が熱くなりながら、手が巻物を広げていこうとする。
気のせい、かも知れないけど。
この絵巻の女性、何となく……。
「◯◯」
心臓を直に掴まれたように、身体が固まった。
…誰かなんて、そんなの。
「ッ!!…あ、あと……っ!?」
振り返ると、やっぱりお風呂上がりだった網問さんが、手ぬぐいで髪を拭いていた。
自分の顔が青ざめていくのがわかる。
謝らなきゃ…!と、口を開こうとしたら。
網問さんの反応は、予想外のものだった。
「あーごめんね。そこに置いてたんだよねー……返してもらってもいい?」
「え…?」
呆然と、言われるままに、巻き直した絵巻を渡すと網問さんは押し入れの中に入れた。
私の隣に腰掛けると、いつものようにニコッと笑う。
…あまりにも落ち着いた彼の様子に、私の頭の中は混乱する。
「変なもの見せちゃってごめんね?」
「い、いえ…!その……私も勝手に見てしまいすみません」
「あははっ、◯◯ならいくらでも見ていいよ」
一応、春画を見られたというのに、いつも通りな網問さんの様子に困惑してしまう。
ふ、普通、もっと慌てたり?怒ったりしない?のかな。
こうゆう時の男の人って。
……むしろ私の方が慌てている。
「…それでさ」
鼻先が付くほどに顔を近づけた、火照った網問さんにドキッとする。
え、なに……?
「見ながら、どんな想像してたの……?」
「っ!?!」
顔が熱くなり、動悸が早まる。
…ニヤリと口の端を上げて、微笑う網問さんに気づいて。
「あ、網問さん……もしかして……ッ」
「うん。真っ赤になって、凄く可愛くて……」
腿に彼の筋張った手を感じて、ピクンと跳ねる。
「…あんな風に、されてみたい?」
「っ!」
眼前で、低い声で囁かれて。
…さっきの絵巻を、私と網問さんで重ねて思い出してしまう。
(ち、ちが……、っ…)
喉まで出かけた言葉は、唇で塞がれて。
…正直に、身体は反応してしまう。
自分の髪が、布団の上に広がる。
「さっきの絵巻の続き、俺たちで作ろうか」
あぁ、こうなった網問さんは……誰にも止められない。私が一番知ってる。
なんで小説なんか思い出しちゃったのかな私…。
後悔しても、時既に遅く。
私は、彼を受け入れた。
※確信犯(?)なエッチな網問夢が書きたかっただけです。
21/09/04
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