sample | ナノ
「…◯◯ちゃん!?」
「…航さん!?」
な、なんで、こんな所から!?
驚きのあまり思考が停止していると、航さんは私をまじまじと見て声を漏らした。
「………う、わ」
「?、どうし……」
真っ赤に染まった、航さんの顔面。
あ、そういえば。
……今の私って。
「!?!、きゃあああああああー!!」
「うわあ!?ご、ごめん…!!」
洞窟の外まで聞こえなそうなくらい叫び、今更胸を隠して慌てて航さんと距離を取る。
ちらりと視線を向けると、航さんは私に背中を向けてくれていた。
み、見られた……。
初めて、男の人に……!
「ほ、本当にごめん!!全然見てな………いや、見ました!!」
「正直に言わなくてもわかりますよ!!…うぅ」
恥ずかしさのあまり、涙が目に滲む。
自業自得なのはわかってるけど…。
こんな顔見られたら、航さんを困らせちゃう……と思い、海水で顔をパシャパシャと洗う。
「◯◯ちゃん…?だ、大丈夫…?」
「な、何でもないですっ。…それより、どうしてここから…?」
突然、海底から航さんが現れるなんて、予想も出来るはずがなく…。
相変わらずお互いに背を向けながら、航さんは説明してくれた。
「や、東南風と泳いでたんだけどさ。あいつ用事があるからって先に帰ったから……ここの洞窟を思い出して、海から潜ってみたんだ」
「う、海から…?」
「あれ、言ってなかったっけ?ここ、海底から繋がってる穴があるんだ」
「…えぇ!?」
そうだったんだ。
じゃあ航さんは、海から此処まで……どのくらいの距離か分からないけど、息継ぎ無しで辿り着いたのが凄い。
「じゃあ、次は俺の番ね。◯◯ちゃんは…?」
「わ、私はその、今日は熱くて堪らなくて、だから海に入りたくて…」
ここなら誰にも見られないから…と、話し終えると、航さんはハァと溜息をついた。
あ、呆れられた…?
「◯◯ちゃん、真面目な話なんだけど。海は危険がいっぱいだから、女の子一人でこんな所来たら駄目だよ…万が一の事があったら誰も助けてくれないし。俺みたいな慣れてる奴ならともかく」
「あ……ご、ごめんなさい」
真剣な声に萎縮する。
航さんの言う通りだ…。
軽率な行動をとってしまった自分に反省する。
「でも何もなくて良かったよ。次からは俺を呼んでね?」
「!、航さん……」
強く叱るどころか、優しくそう言ってくれた彼に胸が高鳴る。
あれ、なんで私、こんなにドキドキするんだろう…。
「……えっと、それでさ…」
「はい?」
「っ、こ、この状況どうする…ッ?」
「ぁ……」
ずっと洞窟の壁に向かって仁王立ちしている航さんと、裸のまま海に浸かり身体を隠し続けていた私。
何ともシュールな光景で。
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