sample | ナノ
「あっつ、い…………」
猛暑。朝から気温が一気に上がり、少し歩いただけで全身からじわりと汗が滲む。
水軍館の近くにある井戸から水を汲み上げると、桶に入れてそこに手拭いを浸した。
水分を絞って、顔や首筋に乗せると、一時的な心地よさに目を瞑る。
「はぁ……。……ぬるい」
これだけ暑かったら、水もすぐ緩くなるに決まってるよね…。
すると遠い浜の方から、楽しそうな声が聞こえてきた。
「あ…間切!あれなんだ!?」
「え?なんだよ重…うわあー!?!」
「あはははは!引っかかったー!やったね重…!」
「げほっこほッ。…重、網問、お前ら…!」
「うわ!間切が怒った!逃げるぞ網問!」
「あいあいさー!」
「待てやゴラァー!」
波打ち際で、鬼ごっこが始まった様子にふふっと笑みを溢す。
その後、三人は海の中にドプンと潜り、海面から顔を出すと満面の笑顔で笑い合っていた。
楽しそうでいいなぁ、と思うと同時に、私は別の事を思っていた。
(男の人はいいなぁ、裸になれて…)
そう、着物を脱いで、袴だけの涼しそうな姿に憧れた。
私だって、出来ればこの厚い着物を、今すぐにでも脱ぎたいけど…。
兵庫水軍は男の人しかいなく、周りの目を気にしてしまう。
(どこか見られない場所とか………。!)
そうだ。あの場所なら。
前に魚釣りをした時、『ここは俺と◯◯ちゃんだけしか知らないよ』って…。
「ありがとうございます。航さん…!」
今度は喉を潤すために、また井戸から水を汲み上げると一気に飲み干す。
自室に行き、手拭いと新しい着物を持ち出すと、私は外に出て歩き出した。
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