Clap
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「本」「記憶」「付箋」(言葉パレット様よりお題をお借りしました。)




何時からこうなったのか、どんな時でも目を閉じると、僕は一冊の本を読んでいる。


独特の紙の匂いや、ぺらりとページを捲る音、その雰囲気を楽しみながら、僕はただただ本を読んでいる。題名や内容を思い出そうとしても、其処だけは空白のようになって、まるで持ち出すことの出来ない禁書のように、本の内容を語ることも出来なかった。ただし、何時でもその本の中の1ページだけはすうっと浮き出るように文字があって、僕はその文章だけ覚えていることが出来たのだ。違うページに文章が浮かぶと、その前にあったページの文章はもう見えなくなっていたりして、ある時から、僕は文章が浮かんだページに付箋を付けるようになった。そうすれば何かがわかるような気がしたのだ。
そうしてペタリペタリと付箋を貼っていく内に僕はある事に気付いた。本が増えているのだ。確かあれは僕の17の誕生日の時だっただろうか、昨日は本の最後のページの文章が浮き出て、これで終わりかと感慨深くなっていたところだったのに、その日ぱちりと目を開けると(目を閉じているけれどもぼくにとってはそういった感覚なのだ)目の前には付箋の貼られていない新しい本が無造作に置いてあったのである。その本を慌てて捲ると1ページ、"今日は僕の誕生日だ。"


そう、これは数多の記憶の本。











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