白い肌に緋色の縄がよく似合う。
大きな瞳に、今にも零れ落ちそうな涙を溜めて。
恥ずかしそうにおずおずと股を開いて、蚊の鳴くような小さな小さな声で強請るのだ。
「…はやく、…ほしいよ…」



          ×××



たった一つしかない窓から注ぐ光は、元から埃っぽくて薄暗い体育倉庫を十分には照らしてくれない。
「ん…っ、ゃ…っ」
そんな体育倉庫のマットに押し倒された女子生徒は苦しそうな、それでいて快感を抑えられないような声を上げた。
茶色に染めた少しだけ色素の薄い髪の毛を振り乱し、制服のシャツを肌蹴させ、短いスカートを捲り上げ股を広げる。
「声出すんじゃねーよ」
萎えるだろ、と女子生徒の上に覆いかぶさった少年が低く口を開く。
それを聞いた女子生徒は、びくりと身体を強張らせて必死で声を押し殺すのだった。




朝の昇降口は、登校してきた生徒と朝練終わりの生徒でごった返す。
つい先ほど朝練を終えた山本は、下駄箱でよく見知った蜂蜜色の頭を見つけて、無意識に口の端を引き上げた。
「ツナ!」
「わ、山本」
くるりと振り返った彼女ににこりとおはようと挨拶をすれば、彼女は目元をわずかに赤く染めておはようと返す。もう付き合って二ヶ月以上は経つのに、いまだに初々しい反応をする彼女が愛しくて堪らない。
「朝練もう終わったの?」
「おー」
「そっか。お疲れさま」
頭一つ分小さな彼女がそう言って笑うから、思わずしまりのない顔をしてしまいそうになった。危ない危ない。彼女の前ではそんなかっこ悪い表情は見せられない。
「あ、今日早く帰れそうなんだけど、寄り道して帰る?」
ツナこないだ行きたい雑貨屋あるって言ってたろ?と脱いだスニーカーを下駄箱へしまうために持ち上げれば、彼女は零れんばかりに元から大きな瞳を輝かせた。
「いいの?」
「いーよ。試合あったから、あんま遊べんかったもんな」
あやすようにぽんぽんと頭を撫でてやれば、うれしそうにふにゃりと表情を崩した。こんな風に、気を許した表情を見せるのが自分だけだと思うと堪らない気持ちになる。
もう下履きから上履きに履き替え終わった彼女は、すでに放課後のことで頭がいっぱいなのだろう、その雑貨屋でなにを買おうかということを考え始めている。それを横目で笑いながら、山本は下駄箱の扉を開けた。
瞬間、見えたピンク色の封筒。
「…………」
す、と山本は目を細める。それは先ほどまでのにこやかな表情ではなく、冷え切った絶対零度の表情。
「山本?どうかしたの?」
下駄箱を見つめたまま固まる山本を不思議に思ったらしい彼女が首を傾げながら見上げた。その瞬間すぐに表情を元に戻す。この表情は彼女には見せてはいけない。
「ん、いや。なんでもない」
「?」
不思議そうな顔を向ける彼女の頭を撫でてやりながら、彼女より高い位置に自分の下駄箱があってよかったと、山本は目の前のそのピンク色の封筒をぐしゃりと片手で潰した。それから上履きに履き替えて、彼女と一緒に教室へ向かう途中、ゴミ箱へそれを投げ入れた。



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