昼休みの食堂は、わいわいがやがやといろんな声と音がごちゃ混ぜになって響く。たっぷりと陽気が注ぐ窓側で、山本は定食の唐揚げを口に頬張りながらカチカチと携帯を片手にメールを打っていた。
「うわ、出た!」
目の前で雑誌を開きながらメロンパンを頬張っていた友人が急に声を上げる。
「なになに?」
その横の友人がカップのコーヒーを口につけながら覗き込んだ。
「これ。この子、かっわいいよなぁ」
「この子?」
「沢田綱吉!」
そう叫んだ友人の声に、山本は携帯から少し顔を上げた。
「沢田綱吉?」
そのページにいたのは、癖のある蜂蜜色の頭をした男の子だった。
「え、おまえ知らねーの?」
「いや、知ってっけど、こいつ男じゃん」
「そーだけど、かわいくね?」
「まー、かわいいっちゃかわいいけど、ねーわ」
「おっまえ、このかわいさわかんねーとか、マジで?」
盛り上がる二人をよそに、山本は再び携帯に視線を戻すとカチカチとメールを打つ。送信ボタンを押してメールが正常に送られたことを確認してから携帯を閉じた。
「な、山本はどーよ?」
「あ?」
「ダメダメ。こいつ野球しか興味ねーって」
「人を野球バカみてーに言うなよ」
「だって実際そうじゃね?」
あははは、と笑い合っていると、山本の携帯が勢いよく震えた。
「あ、わり」
一応断りを入れて通話ボタンを押す。
「もしもし、起きたか。ん?昼ご飯?いーって、別に。気をつけて行って来いよ。戸締まりちゃんとしてな?うん、じゃあな」
ぷち、と電話を切る。ふ、と顔を上げると二人の友人がこちらを見ていた。
「…どした?」
「あの噂、ほんとだったんだな」
「あの噂?」
「山本が夜の蝶と付き合ってるって噂!」
「夜の蝶って」
「だっておまえバイトしてねーだろ?金持ちならまだしも、ただの大学生がバイトしてなくて生活出来るっておかしくね?」
「それにおまえ、合コンとか誘ってもぜってー来ねえしさぁ」
「これはもう、キャバ嬢とかと同棲してヒモしてんじゃねーかって」
山本を置いて早口でまくし立てる友人たちから少し視線をずらす。雑誌の中の沢田綱吉と目が合った。
「で、実際どーなの?」
さっさの電話だって彼女だろ?と訊ねる友人の瞳は輝いている。キャンパス内一モテるイケメンの浮いた話だ。彼女がいるなんてわかったら、学校中大騒ぎになるだろう。
「…一緒に住んでる奴はいる」
それだけ答えて、食べ終えたトレイを持って立ち上がる。
「え、それって、」
「まー、おまえらの噂?っての、あながち間違ってねーよ」
 じゃ俺教授に呼ばれてっから、と山本は食堂をあとにする。
「「マジかよ!」」
二人の友人の声が食堂内に大きく響いた。

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